2025.11.13 国民民主党 浜野よしふみ議員 参議院予算委員会 (全文文字起こし)
▼本記事は下記動画のうち、浜野よしふみ議員の質疑部分について文字起こししたものです。
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質疑
賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行について
浜野議員:国民民主党の浜野よしふみでございます。30年余りにわたる経済停滞を脱却し、経済を浮上させなければならない、こういう思いで質問をさせていただきます。石破前総理がこう説明をされておられました。賃金が上がり、家計の購買力が上がることで消費が増え、その結果、物価が適度に上昇し、それが企業の売上、業績につながり、新たな投資を呼び込み、企業の成長やさらなる賃金上昇につながるという、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を目指していくというものであります。高市総理の方向性と同じと理解をいたしますけれども、見解をお伺いいたします。
高市総理: 高市内閣では、強い経済を構築するため、責任ある積極財政の考え方のもと、戦略的に財政出動を行うことにより、所得を増やし、消費マインドを改善し、事業収益が上がり、税率を上げずとも税収を増加させることを目指しております。石破内閣におきましても同様の基本認識であったと考えております。あえて申し上げましたら、私どもでは、世界共通の課題という需要に対し、日本の優れた技術を生かして、その解決に資する分野に官民で投資をして、製品、サービス、インフラを内外の市場に展開していく、危機管理投資に重点を置いて経済成長を目指すという考え方、これは固有のものだと思っております。ほんとにこういった形で好循環を実現することで、国民の皆様に景気回復の果実を実感していただき、不安を希望に変えてまいりたいと思っております。

給料が上がる経済の実現に向けた政府方針について
浜野議員:石破総理がおっしゃっていたこと基本的には踏襲した上で、戦略的投資という形でバージョンアップした、とそういうふうに理解をいたしました。国民民主党は、給料が上がる経済を実現することを主張してまいりました。先ほど申し上げました説明は、我々が主張しています給料が上がる経済を明快に示していただいていると理解をしております。政府と国民民主党において目指すべき経済は一致していると私は理解をしております。ポイントは賃上げと消費の拡大、さらには投資の拡大という風に理解をいたしますけれども、総理の見解をお伺いいたします。
高市総理:給料が上がる経済を目指す、さらには手取りを増やしていくという、御党の考え方と高市内閣の目指す方向は一致していると考えております。先ほど申し上げました危機管理投資を起爆剤とする成長戦略によって、日本経済の供給構造を強化してまいります。これによって所得を増やして消費マインドを改善していく、事業収益を上げていく、税率が上がらなくても税収を増加させていく、そうした好循環を実現させたいと思っております。あわせて継続的に賃上げできる環境を整えるということが政府の大事な役割でございますので、生産性向上支援ですとか、さらなる取引適正化、これを通じて中小企業、小規模事業者の皆様を強力に後押ししてまいります。

消費拡大と物価上昇に関する日本銀行の見解について
浜野議員:ここから少し、上田日銀総裁にお伺いしたいと思います。日銀も、長年にわたって、消費が増え、その結果物価が適度に上昇するということを目指してきたものと私は理解しているのですが、日銀総裁に見解をお伺いいたします。
植田和男日本銀行総裁:お答えいたします。私ども日本銀行ですが、2%の物価安定の目標のもとで、景気が改善することにより個人消費や設備投資が増加し、賃金の上昇を伴いつつ、物価が緩やかに上昇することを目指しております。そのことが息の長い成長を実現し、国民経済全体にメリットをもたらすと考えております。今後ともそういう状況を実現するために適切に政策運営してまいりたいと思っております。

消費拡大と物価上昇の現状に関する日本銀行の見解について
浜野議員:長年にわたって、前黒田総裁時代から、この消費が増え、その結果物価が適度に上昇するということを目指してこられたと理解をしています。その上で、そうしたことが今実現をしているのかということについても、総裁にお伺いしたいと思います。
植田日銀総裁:最近の個人消費の動向でございますけれども、食料品等の非耐久消費財は、米を含む食料品価格上昇の影響でやや弱めの動きとなっておりますが、耐久財サービスを含む消費全体としては、雇用所得環境の改善を背景に底堅く推移していると見ております。こうしたもとで、労働需給の逼迫等に伴う賃金上昇、販売価格に転嫁する動きが継続しておりまして、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇するメカニズムが作用していると考えております。

現状の物価上昇の要因に関する日本銀行の見解について
浜野議員:その方向に動いているんだけれども、目標とされている基調的な物価安定目標は達成されていない、このように理解いたしました。その上で総裁にさらにお伺いするんですけれども、現状の物価上昇についてお伺いいたします。物価上昇には、消費が増え、その結果物価が上昇する需要が引っ張るデマンドプル型と、輸入物価上昇の価格転嫁等によるコストプッシュ型の2種類があると理解をいたしておりますけれども、現状をどのように見ておられるのか見解をお伺いいたします。
植田日銀総裁:ご指摘のような、いわゆるデマンドプル型のインフレーションとコストプッシュ型のインフレーションを明確に識別するのはなかなか難しいものでございます。例えば、米を含む最近の食料品価格上昇につきましては、一時的なコストプッシュ要因が相互に作用している、影響していると考えております。一方で、景気が緩やかに回復し、労働需給が逼迫する元で、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きも続いておりまして、食料品のみならずその他の財やサービスの価格も緩やかに上昇しております。こうした状況を踏まえまして、私どもとしましては、一時的な要因を除いた基調的な物価上昇率は2%に向けて緩やかに上昇していると判断しております。

減税と賃上げによる経済成長戦略に関する総理の見解について
浜野議員:ご専門的に正確に説明をしていただいたと思うんですけれども、デマンドプル型とコストプッシュ型明確にどの程度なのか仕分けするのは難しいと思うんですけども、ご説明を理解すると、やはりコストプッシュ型が優勢で、望ましい需要が引っ張るデマンドプル型は大勢を占めてない、というご説明だったと理解をいたしました。そういう中で、国民民主党は、このように消費や需要がなかなか伸びない経済停滞期の今は、減税をして手取りを増やして、消費を喚起をして経済を回していこうということを主張してきたわけであります。全くもってこれは正論だと我々は自信を持っております。一方で政府は、6月に閣議決定された骨太の方針におきまして、減税政策よりも賃上げ政策こそが成長戦略の要という基本的な考え方のもとで、成長型経済を実現することを目指していくとされました。減税を頭から否定する方針になっていたわけです。軌道修正されるものと理解をしていますけれども、総理の見解をお伺いいたします。
高市総理:石破内閣における骨太の方針2025の記載につきましては、成長戦略において、賃上げ政策は、何よりも重要であるとの考え方を示したものでございます、が、必ずしも減税政策を否定したものではないと認識をしております。現に、石破内閣におきまして、所得税のいわゆる103万円の壁については、160万円まで引き上げることとしておりましたし、今後納税者の皆様にもこれから近々その効果が及んでいくことになります。その上で、高市内閣におきましても、すでに策定を指示している経済対策におきまして、第1の柱として、ガソリン税や軽油引き取り税の暫定税率の廃止など内容とする、生活の安全保障、物価高への対応を盛り込んでおります。とにかく強い経済を構築して、税率を上げずとも税収が増える、そういう姿を目指してまいります。
浜野議員:減税を否定していないというご説明ですが、それはそうかもしれませんけれども、減税という政府が判断をするものと、賃上げという民間産業が判断するものを政策として並べて、減税よりも賃上げをという政策の立て方そのものが誤っていたと私は思っています。それだけは申し上げておきたいと思います。

プライマリーバランス黒字化目標の趣旨と目的について
浜野議員:ここからは、財政健全化について取り上げます。財政健全化という考え方が、経済浮上の足を引っ張ってきたのではないかとの問題意識に立ってお伺いしたいと思います。2001年小泉内閣のもとで、プライマリーバランス黒字化目標が閣議決定され、今日まで堅持され続けております。プライマリーバランス黒字化目標とは何か、またその狙いは何か、政府参考人に説明を求めます。
阿久澤内閣府生活統括官:プライマリーバランスについてのおたずねでございますけれども、プライマリーバランスとは公債金収入を除く歳入から、債務償還費と利払費を除く歳出を引いた値でございまして、その年に必要な政策的経費をその年の税収等の歳入でまかなえているかを示す指標でございます。また、債務残高対GDP比に与える影響につきましては、債務残高対GDP比の動向これは成長率と金利の大小関係とプライマリーバランスとの水準の組み合わせによって決まるものではございますが、プライマリーバランスが黒字であれば、債務残高対GDP比の引き下げに寄与するものでございます。このため小泉内閣以降の骨太方針におきましては、財政健全化に向けたフローの指標といたしまして、プライマリーバランスの黒字化を財政健全化目標に掲げてきたところでございます。現在の骨太方針2025におきましては、2025年度から2026年度を通じて可能な限り早期の国地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化を目指す、必要に応じ目標年度の再確認を行うとされているところでございます。

プライマリーバランス黒字化目標の見直しに関する総理の見解について
浜野議員:その上で、総理にお伺いいたします。30年余りの経済停滞を脱して、経済が浮上できるかどうかのギリギリの重要な局面にあると、総理はおっしゃっていると思います。私も全くもって同感であります。であるならば、このプライマリーバランス黒字化目標を一旦棚上げにするといったようなことについても検討してはどうかと考えますけれども、見解をお伺いいたします。
高市総理:中期的に、債務残高対GDP比の引き下げを安定的に実現する中で、必要に応じてプライマリーバランスの目標年度についても再確認を行います。今後の課題として、単年度ごとのプライマリーバランス黒字化目標の達成状況を見ていくという方針を、数年単位でバランスを確認する方向に見直すことを検討いたしております。今後の予算編成ですとか、1月の内閣府中長期試算の状況を見極めながら、来年の骨太方針に向けてより明確化をします。
浜野議員:経済を30年あまりの停滞から浮上させるためには、私は踏み込み不足ではないかということを申し上げておきたいと思います。

自国通貨建て国債のデフォルト可能性に関する財務大臣の見解について
浜野議員:ここからは財務大臣にお伺いいたします。財務省は2002年に外国の格付け会社に対しまして意見書を出しております。「日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルト(債務不履行)は考えられない。デフォルトとしていかなる事態を想定しているのか」というものであります。変動相場制のもと、円という自国通貨建てで発行されている日本国債の債務不履行は考えられないと理解をいたしますけれども、見解をお伺いいたします。
片山さつき財務大臣:ご質問ありがとうございます。ご指摘の文書でございますが、2001、2002年、IMFと国際機関の我が国に対する評価も非常に厳しかったし、格付け機関も厳しかったので、私自身この意見書を持っていろんなところを回っておりました。当時財務省の文書課の室長をしておりましたんで。で、この文書は正しいんですよ。こういう見方でこういう書き方になりますので。ですから特に外国格付け機関ですとか国際機関のエコノミストに対して、格下げ格下げとおっしゃいますが、より客観的なデータや理由はあるんですかと いうことで、財政構造改革にも取り組んでおりますし、当時の強固なマクロ経済の中で、自国通貨建ての、日本円建ての国債のデフォルトは考えられないと。当時日本の経常収支の黒字というのは世界一でした。今は中国、ドイツ、日本ぐらいの順番が多いんですけど、前から上の方ですよ。という意味も含めてそう自信持って言っていたわけでございます。
そして、委員ご指摘のような点もありますが、この意見書があるからと言って、金利が上がったり、国際市場が売り崩されることが絶対にないのかというと、それまた別の動きがありますから、そこを否定したものではないということですが、この理論づけというかこの文章自身は私自身も持って歩いてましたから、正しいということを言わないとなかなか大変ですし、理論的にも正しいと思っております。

自国通貨建て国債の債務不履行の可能性に関する質問
浜野議員:金利とか物価上昇は横に置いて、あとで聞きますんで、この意見書のことじゃなしに、私が質問したのは、変動相場制のもと円という自国通貨建てで発行されている日本国債の債務不履行は考えられないという理解をしますけれども、どうですかということなんです。
片山財務大臣:円、返済できるかと言ったら円建てでございまして、今でも当時でも保有者は圧倒的に国内が多いということもあり、通常考えにくいというのはその通りでございます。
浜野議員:明快にそのようにお答えいただいたことについて、敬意を表する次第でございます。国民の皆様方にも認識していただきたいと思うんですけれども、自国通貨建て円で発行している日本国債が債務不履行になるということは考えられないんだということを財務大臣がご答弁いただきましたので、ぜひ国民の皆様方におかれてはご安心いただければいいのではないかと思います。

財政の信認喪失時の影響に関する財務大臣の見解について
浜野議員:関連してお伺いいたします。加藤前財務大臣は本年3月10日の参議院予算委員会で次の通り述べられております。「ひとたび財政の持続可能性に対する信認が失われたという場合には、金利の急上昇、また過度なインフレが生じ、日本経済、社会、国民生活に多大な影響を与える可能性は否定できない」というものであります。財務大臣は、この考え方と同じ認識に立つのかご説明いただきたいと思います。
片山財務大臣:前任の財務大臣でございますので、事務方がきっちりと詰めて出てきた答弁でございますから、私はこの認識を否定するものではございませんが、よくこのような議論は国会でも色々なところで展開されるんですけれども、信認の有無ですとか、マーケットの受け取り方ですとかいうことも含めて、ゼロイチの議論ではありませんので、こういう非常に慎重な見方を言うからいけないということではないんですけれども、後程もそういう議論になるかと思いますが、その信認が失われる取ってどういう時なのとか、その可能性が実際にリスク分析でどれくらいあるのということを考えますと、過度にリスクを無視するのは非常にこの職業として良くないですけど、過度に強調しすぎたらそれがいいことにつながるのというと、そういう証左もないものですから、実は財務省の諸氏にも私着任して直後に申し上げたんですけど、例えば国の債務の見方としても、純債務もあり粗債務もあり各々に洗い替えをしているのかということもあるので、その統計というのは各々の理由する人の理由がありますから、360度客観的にさまざまなものを比べて利用する方が良いんじゃないかということを申しましたら、昨日も公表されておりますけれども、経済財政諮問会議の若田部教授が、元日銀の審議委員でいらっしゃいますが、そこをわざわざ添付していただきましたので、これは当たり前のことなんですが、ということではないかと思っております。

国債債務不履行がない中での財政不信認識に関する質問
浜野議員:色々とご説明いただいたんですけれども、両極端に考え方が走ってはならないということは私もおっしゃる通りだと思うんですけれども、そもそもですね、財務大臣が明言いただきましたように、国債の債務不履行はないんだ、考えられないんだとなるのに、なぜそもそも財政不信任ということがあり得るのかということが私は疑問なんですね。ご見解をお伺いいたします。
片山財務大臣:本当に国際金融の危機というのは、日本国においてそれが一度もなかったかどうかというのは戦後のすぐもありますから、当然、状況によっては無いとは言えないんですけれども、IMFを通じて色々な金融危機を支援するようなことも、私どもの役所はずっとやっておりますが、そういう時には国際収支危機が起きるんで、財政危機の関係でどういうものがあるかというと、先ほど委員が「無いだろう」とおっしゃった、私も非常に確率は低いと思いますが、債務返済が不履行になると。
IMF等からの例外的に大規模な公的財政支援が必要な状態、つまり支払いができないということに陥ると、市場からの資金調達に困難が生じるという事態が発生している場合が挙げられますが、先ほど私がその日本の経常収支が今でもトップクラスの黒であるとか、対外債権もトップクラスの債権国であることを考えると、それはあまり現状においては起きにくいので、まぁ絶対起きないかというと、またさっきの論理になっちゃうんでね。というようなことで、想定される場合というのは、今私がご答えした通りですが、それが起きにくいかどうかということはまた今議論しているわけです。

金利急上昇時の日銀の対応に関する財務大臣の見解
浜野議員:財務大臣に真摯にご答弁いただいたと思います。確率は極めて低いという風にご説明いただいたものと思います。上田日銀総裁にお伺いいたします。いろんなことの中で万が一の金利の急上昇があれば、私は日銀が適時適切に対応いただくものと理解をいたしますけれども、見解をお伺いいたします。
植田日銀総裁:まず長期金利は私ども金融市場において形成されることが基本であると考えております。その上で理屈を申し上げますと、長期金利は先行きで短期の金利の見通し、それからそれに国債保有に伴う各種リスクに応じた、よくタームプレミアムと呼ばれたりしますが、これを加えたもので形成されると考えられます。
先行きの経済・物価情勢や金融政策、財政政策に対する市場の見方の他、海外金利の変化等を反映してある程度変動することを想定しております。その上で、通常の市場の動きとは異なるような形で長期金利が急激に上昇するといった例外的な状況においては、市場において安定的な金利形成を促すという観点から、私ども機動的に国債買入れオペの増額あるいは指し値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する考えでございます。こうした考え方は従来から変わっておりませんし、市場動向については今後ともしっかりと見ていきたいと思っております。

過度なインフレの発生可能性に関する財務大臣の見解
浜野議員:私は日銀は金利に大きな影響を与える力を持っていると理解をいたしております。適時適切にご対応いただけるものと考えております。
片山財務大臣にさらにお伺いするんですけれども、この過度なインフレということですけれども、どういう経緯でこの過度なインフレが起こるのかということについては色々あると思うんですけれども、現状は、先ほど申し上げたように需要が引っ張る形の適度なインフレも起きていないわけなんで、過度なインフレを恐れるような状況には私は全くないと思うのですけどね。その辺りのご見解をお伺いいたします。
片山財務大臣:昨日もコストプッシュ・インフレ、デマンドプル・インフレのお話が出まして、総理も再三おっしゃられているように、政府としては日銀に、安定的持続的に2%程度のインフレが定着する状況を、金融政策は日銀にお任せしているわけですから、ご期待申し上げているというのが現状でございます。まだその状態には至っていないというのが、総理も答弁されているように判断でございますから、なかなかその状況を最近見ていないわけですよね。
それだけ、その逆の動きの腰が強いということもあるし、バブルのピーク時ですね。バブルが生じていた頃も、土地といくつかの投機物件については大変な状況の価格だったんですが、その時に消費者物価、様々な名目の中でどのぐらいのものが過度なインフレになっていたかという調査も行なわれているんですけど、あんまりなっていないんですよね。全然なってないんじゃないですが、あんまりなっていないので、この国の消費構造の特色というのもある程度あるかなと思いますが、近年確かに私もその状況をあまり見たわけではないので、日本において、つまりオイルショックの当時にあったと言われている狂乱物価、それがどの程度になったのかと。その時は私はまだこの仕事をしていないんですが、少なくとも1982年からこの仕事をしていて、それが中心になったような政策を(聞き取れず)取った記憶がないので、40年やっていますけれども、なかなかそれはこの国においての状況適用、現実というのをお答えするのは難しいところがあります。逆に言うと委員がご指摘のように、あまり起きていないと、そういうことでございます。

経済停滞期の財政対応について
浜野議員:真摯にお答えいただいたものと思いますけれども、いずれにせよ、この30年あまりもの経済停滞の中で、総理もよくおっしゃっていますけれども、その消費マインドがやはり冷え込んでしまっているということは認識すべきではないかと思います。
この関係もう一つお伺いしたいんですけれども、財務大臣に伺いますけれども、先ほど取り上げたような説明をせずに、私は「経済停滞期には減税・財政支出増、経済過熱期には金融・財政政策で経済を冷やします。万が一にも財政の持続可能性の不信認などという事態を起こしません」という風に財務大臣がしっかりと説明されることが大事だと思いますが、ご見解をお伺いいたします。
片山財務大臣:先ほどのことの繰り返しになりますが、財政不信認が過度なインフレに至る経路が実際に起きたことがほとんどないので、なかなか説明はできませんけれども、本当に通貨が暴落すれば、輸入要因の方でまた過度なインフレが助長されて、生活は明らかに苦しくなります。それが派生的な結果を呼ぶかもしれませんし、さらに、今までこの40年経験したことがないようなインフレになる可能性は無くはないですが、それは加熱によるデマンドプルではないですから、委員がおっしゃっているような理論が崩れるわけではないんですけど、いずれにしても、それは国民生活において非常に良くないことだし、避けるべきことなのは当然です。高市内閣では「責任ある積極財政」を言っているのは、この「責任ある」が何のためにあるかというと、「そういうことは起こさせない」と。国家の経済運営においても、国債の信認においても、円の信認においても、そういうことは起こさせないという様々な経済政策の手段を全て駆使してやるということですから、その上で、財政のチョイスの一つとして、減税が必要かどうかということで、いろんな議論をしておりますが、冒頭総理がお答えになったように、当然そういうオプションを否定しているわけではないというお答えではないかと思います。

貨幣の本質に関する日銀総裁の見解
浜野議員:ありがとうございます。総理は暮らしと未来への不安を希望に変える、というふうに明解におっしゃっています。私も本当にこれは素晴らしいフレーズだと思います。従って、先ほど申し上げたような説明は、逆に不安を希望に変えるのではなく、不安を助長することになりかねないので、先ほど取り上げたような説明はぜひ慎んでいただきたいと考えます。
財政健全化につきましては、社会的に意見が分かれていると認識をしております。この理由につきまして、貨幣とは何かということについての考え方の違いに由来するのではないかとの説があります。貨幣の本質の捉え方によって、銀行の機能は何か、インフレがどのように起こるのか、政府はどのように資金調達をしているのか、ひいては財政運営をどのように行うべきか。すなわち、税収の範囲内で財政支出を行うことを基本とする健全財政が適切か、経済状況に応じて財政支出をすべきとする積極財政が適切かなどについての考え方が分かれるとの説であります。
その説に基づいて質問をさせていただきます。日銀総裁にお伺いいたします。一般に言う貨幣、すなわち現金通貨や預金通貨とは、交換手段として導入された有価物であると考えるのか、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債であると考えるのか、日銀総裁の見解をお伺いいたします。
植田日銀総裁:お答えいたします。現金通貨や預金通貨ですが、これは家計や企業等の通貨保有主体から見ると資産になります。一方で、中央銀行や民間銀行等の通貨発行主体から見ると負債になります。このように、主体によって現金通貨や預金通貨は資産、負債のいずれにも捉えられるというふうに考えております。

銀行の機能に関する日銀総裁の見解
浜野議員:公式見解としてそういう説明になると思うんですけれども、日銀の会計上は、総裁が説明されたようにバランスシート上負債に位置づけられておりまして、それが世の中に流通しているということなので、負債であるという見方が正しい見方ではないかなと私は思います。
その上で次にインフレについてお伺い、あ、失礼しました。銀行の機能についてお伺いいたします。銀行は預金を受け入れそれを使って貸し出しをしていると考えられるのか、借り手に貸し出すことによって預金という通貨を創造していると考えるのか、見解をお伺いいたします。
植田日銀総裁:現実の銀行実務に即して申し上げますと、民間の銀行ですが、これは家計や企業に資金需要があり、かつ貸出金利が借り手銀行の借りての返済能力や審査費用などに見合った水準にあると判断すれば貸し出しを実行いたします。その際、借り手の預金口座には同額の預金が発生し、信用創造が行われることになるという風に考えられます。
浜野議員:そういうことなんですね。貸し出しをすることによって銀行は預金通貨というものを創造しているということだと思います。これは一般的なイメージと離れているかもしれませんが、実態はそうであると、ここの認識が私は大切なんだろうと思います。

インフレ発生の要因に関する日銀総裁の見解
浜野議員:次にインフレについてお伺いいたします。貨幣供給が増加するとインフレになるというふうに考えるのか、実物経済の需給バランスによってインフレになるというふうに考えるのか。総裁の見解をお伺いいたします。
植田日銀総裁:これは分かりやすく申し上げれば、特に短期的には実態経済における様々な要因、需要供給のバランスで物価、あるいはインフレ率が決まってくると考えております。ただし、そうした需要、特に需要サイドへ影響する要因として、例えば貨幣的な要因もあるということであるかなと考えております。

政府の資金調達と日銀の役割に関する見解
浜野議員:やや微妙なお答えだったと思うんですけれども、私なりに考えれば、長年にわたる量的緩和が物価上昇を結果として生まなかったということを考えれば、やはり物価上昇というは貨幣的な現象とは考えられないというのが一つの考え方ではないかなと思うところでございます。
さらに伺います。政府の資金調達について伺います。例えば政府が1兆円の国債を発行して銀行が購入した場合、日銀は銀行の日銀当座預金が1兆円以上ある場合、それを1兆円減額し、政府預金を1兆円増額するという対応をいたします。
よって、日銀券と銀行預金を合わせたマネーストックと呼ばれる世の中に出回っているお金が1兆円減るものではないということであります。したがって、この場合の政府の資金調達は民間からの借入れで支えられているのではなく、政府と日銀が貨幣を創造することによって支えられていると考えますが、総裁の見解をお伺いいたします。
植田日銀総裁:ご指摘いただいた通り、政府が国債を発行いたしまして、その国債を銀行が購入する場合、その段階ではマネーストックは変動しておりません。その後、政府が国債発行により調達した資金を実際に使ったといたしますと、家計や企業の銀行預金が増加いたします。このように、結果的に銀行の国債購入分だけ民間の預金が増えるという意味で、貸し出しの場合と同様、信用創造が行われることになります。ただ、この場合、信用創造の主体は政府や日本銀行ではなく、民間銀行など預金取り扱い機関であると理解しております。
浜野議員:貸し出しの主体というか、それは銀行かもしれませんけれども、それを支えてそこに至らしめた経路を作ったのは、政府と日銀であるという理解ではないかなということを申し上げておきたいと思います。

マネーストックの創出主体に関する日銀総裁の見解
浜野議員:さらに伺います。日銀がマネーストックと呼ぶ現金通貨や預金通貨などが根源的に誰がどのように発行しているのかについて伺います。現金通貨や預金通貨は、政府や民間に資金需要があり、それに答えて政府、日銀と銀行が創造し供給されているものと理解をいたしますけれども、総裁の見解をお伺いいたします。
植田日銀総裁:先ほどとちょっと重なりますが、やはり銀行実務に即して申し上げますと、家計や企業などの資金需要に応じて民間銀行が貸し出しを実行することで同額の預金が発生し、信用創造が行われます。また、政府の資金需要に応じて民間の銀行が国債購入を実施しますと、政府の財政支出が行われた段階で同額の預金が発生し、信用創造が行われます。ただし、資金に対する需要さえ存在すれば信用創造が無限、無制限に行えるというわけではございません。民間の銀行は投融資の採算性やリスクなどを考慮し、自らの目線に見合うかどうかを判断した上で貸し出しや国債の購入を行っている点には留意が必要であると考えます。

貨幣供給の起点に関する財務大臣の見解
浜野議員:私も総裁がおっしゃったように無制限じゃないと思います。それは銀行は銀行で貸し倒れ見込みがあるのに貸すというわけではないでしょうから、それはやはり銀行の判断で制限があるということです。
その上で財務大臣に伺います。世の中に出回っているお金は、国民が負担する税や国民の預金をもとに供給されていると一般的にはイメージされているのかもしれません。しかしそうではなく、世の中に出回っているお金の起点は、政府や民間に資金需要があり、それに応えて政府、日銀と銀行が創造し供給されているのが実態であると考えますが、見解をお伺いいたします。
片山財務大臣:いま日銀総裁からお答えがありましたように、その信用創造が行われるルートというのはお答えの通りでございます。ただ、これも日銀総裁がお答えになりましたように、その資金需要が無限に野放図にというわけではなくて、そのリスク判断を民間銀行も行っているし、国債を購入する時点でも行っているということになっているわけですから、そういうところで、当然、採算性やリスクなどの判断があるわけですから、一定のキャップはかかると思いますけれども、大体今言われたようなことの通りであると思います。すいません、お答えになっているかどうか。

財政支出の財源に関する総理の見解
浜野議員:お金は実態として創造されているということだと思います。そうではなくお金が有限であれば財源確保が必要という話になるわけですけれども、お金は創造されているのが実態であるということだと思います。この実態を踏まえて政府財政を考えることが極めて重要であることを申し上げておきたいと思います。
その上で、総理に伺います。10月23日の日経新聞の一面の「多党制時代に望む」というコーナーに次の論説が掲載されておりました。「国家が支出を増やすには国民の貯蓄から借りるか増税しかない。公のお金などない。あるのは納税者のお金だけだ。首相が尊敬するサッチャー元首相は為政者のみだりな財政拡大を戒しめている」という論説でございます。サッチャー氏が言ったとされる考え方について、総理は賛同されるでしょうか。
高市総理:私が尊敬しておりますマーガレット・サッチャー元英国首相ですが、政府によるみだりな財政拡大を戒しめる趣旨のご発言であります。ここには、やはりこの納税者のためにワイズ・スペンディングをしなければいけないという視点が入っていると感じますので、その考え方には同調いたします。(補足:「ワイズ・スペンディング」個人や企業が将来の利益や価値を最大化するために、計画的かつ戦略的に金銭を使うこと)
ただし、私は新自由主義の考え方を持つものではございません。この高市内閣では、みだりにこの財政拡大をするということではなくて、官民による投資で、世界に先んじて課題解決に資する製品やサービスやインフラを生み出すと。責任ある積極財政という言葉を使っております。これは戦略的に財政出動を行うことで、強い経済を構築すると同時に、財政の持続可能性、これも確保するということです。国民の皆様からお預かりしている大切なお金ですから、これは有効に活用し、その果実は安全で安心して暮らせる日本を作る、成長をしていく経済を作っていく、そういうことで国民の皆様に還元できると思っております。それが今を生きる私たちの未来に対する責任だと思っております。

積極財政と財政健全化に関する総理の見解
浜野議員:前近代の、国民の生産物だけに支えられた経済であれば正しいのかもしれませんけれども、中央銀行制度に基づく民間銀行などの金融システムが創造され、お金が創造される経済においては誤った考え方であると言わざるを得ないと私は考えております。
これまでの質疑を総合して申し上げます。政府と日銀がお金を創造できるので、積極的な財政支出を継続的、持続的に行うことは可能である。一方で、財政支出が過大になると、需要が供給を大きく上回り、過度なインフレが起こり得るので、十分な留意が必要である。しかし、積極的な財政支出により供給力を向上させていけば、需要が供給を大きく上回ることを回避することが可能であります。したがって、求めていくべきことは、財政健全化ではなく、積極財政によって経済において需要と供給の双方をバランスよく伸ばしていくことが大事である。こうした考え方に立てば、財源が必要との考え方にとらわれることなく、国民生活向上のため様々な対策を打つことが可能であります。
総理にお伺いいたします。財政健全化につきましては様々な考え方があります。様々な考え方の有識者を集めて冷静な議論をし、その議論を国民に是非公開をしていただきたいと考えますけども、見解をお伺いいたします。
高市総理:昨夜開いたところなんですが、経済財政運営についての議論を、学識経験者や経済人も参画する形で経済財政諮問会議を行っております。また国の予算などに関しましては、これは財務省の財政制度等審議会などにおいて、経済界ですとか企業関係者、学識経験者、言論界、労働組合など、多様なバックグラウンドを有する識者にご議論いただいていると承知してます。これらの会議におけます議論については議事録、議事要旨を公表しておりますので、しっかり情報発信に努めてまいります。
浜野議員:政府財政についてどう考えるかということについて、私は日本の将来を分けるものだというふうに考えております。是非、冷静な検討を求めておきたいと思います。日銀総裁におかれましてはここまでで結構でございます。ありがとうございます。

株主価値最大化と経済停滞に関する総理の見解
浜野議員:ここからは、株主価値最大化路線、つまり企業の使命は株主価値の最大化を最優先することであるというこの考え方が経済停滞を生んだのではないかという観点で質疑をさせていただきます。1995年を100とした時の2024年における配当金、経常利益、設備投資、従業員給与のそれぞれの比率でありますが、投資、賃金は30年間横ばい、一方で配当金は10倍、利益は5倍まで伸びている状況にあります。これをどう考えるのか、総理の見解をお伺いいたします。
高市総理:過去30年間の企業の動向を見ますと、リーマンショックやコロナ禍による落ち込みはありながらも、配当金や経常利益は伸びた一方で、賃金、設備投資は伸び悩んでまいりました。投資が低迷している背景としては、長年のデフレの中で企業部門がコストカットを行ってきた結果、収益の増加に比して、賃金や将来の成長のために必要な投資が抑制されてきたとそのように考えます。やはり強い経済を実現するためには、企業が過度に預貯金を保有するのではなく、設備や人への投資などに効果的に活用するということを通じて、労働者への分配を増やしていくことが重要だと考えております。

株主価値重視の制度改革と経済への影響に関する総理の見解
浜野議員:企業がそういう対応を自然にしたわけじゃないと思うんです。そういう企業行動を促してしまった制度改正があったものと私は理解をいたしております。1990年代から2000年代にかけましては、日本はアメリカのコーポレートガバナンス改革を模倣し続けてまいりました。その流れの中で、企業の使命は株主価値を最大化することであるとの考えで法制度改正を行ってきたものと理解をしております。1997年のストックオプション制度の導入であったり、2001年自社株買いについて目的を限定せずに取得・保有を可能にしたことなどであります。こうした制度改革が、賃上げと投資が牽引しない、成長できない経済を生んだものと理解をいたします。こういう制度改革が大きな要因であると理解をいたしますけれども、総理の見解をお伺いいたします。
高市総理:私も、企業が持続的な成長を実現するためには、企業の利益や株主への分配だけではなくて、人材投資や新事業や研究開発に投資をしていくこと、ものすごく重要だと思っております。こうした観点からコーポレートガバナンスコードを改定しまして、企業が経営資源を適切に配分することを促すといったことなど、これからもコーポレートガバナンス改革をしっかりと進めてまいります。

株主価値最大化路線の検証の必要性について
浜野議員:この株主価値最大化路線についてはこれで終わりますけれども、これについても是非、冷静な検証をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
高市総理:しっかり冷静に検討をしてまいります。特に、政府と連携しつつ東京証券取引所が定める上場企業の企業統治に関する原則、視聴者の皆様もいらっしゃるので説明しますが、そのコーポレートガバナンスコードにおきましても、上場企業は株主のみならず従業員や取引先を含む多様なステークホルダーとの協働に努めるべきであるということを明記しているわけでございますので、しっかり多様なステークホルダーの利益につながるように改革を進めてまいります。

物価上昇に伴う公的制度の点検見直しについて
浜野議員:次に、6月の骨太の方針に盛り込まれました物価上昇に合わせて公的制度の点検見直しについてお伺いいたします。政府自身が物価上昇を上回る賃金上昇の実現に向けて率先する、物価上昇が継続していることを踏まえ、予算、税制における長年据え置かれたままの様々な公的制度にかかる基準額や敷居値について、省庁横断的、網羅的に点検し見直しを進めるという方針が示されました。画期的な方針であると理解をいたしています。強力に進めていただきたいと思います。どのような項目を対象として省庁横断的に検討されているのか、城内担当大臣にお伺いいたします。
城内実内閣府特命担当大臣:はい。これ非常に重要な論点でございまして、この公的制度にかかる基準額や敷居値、これは非常に重要です。先ほどは日銀の植田総裁とのやり取りで、この貨幣はまさに有価物であるという、商品貨幣論ではなく信用創造の仕組みについてやり取りを聞かせていただきまして、私自身の考え方も間違ってなかったということを確認できまして、本当にありがとうございます。
まずお答えします。物価の上昇を踏まえまして、予算、税制における長年据え置かれたままの様々な基準額や敷居値につきましては、国民生活へ深刻な影響が及ばないよう、省庁横断的にご指摘の通り、今年6月、点検見直しに取り組んでいるところでございます。それ以来具体的には、法令に基づく補助事業におきまして、309件の基準額・敷居値を点検いたしました。その結果、約9割の277件は過去10年以内に見直しを実施済みである一方、自動車事故等による交通遺児に対する給付金や、保護観察対象者をサポートする更生保護法人への委託費などは、長年据え置かれたままであり、今般の予算編成プロセスにおいて見直しを検討しております。過去10年以内に見直しを行っているもの277件のうち、207件、約7割ですが令和8年度に改めて見直しを行うこととしております。国税、地方税についても網羅的に点検作業を行ったところでありまして、今後、与党税制調査会等においてご議論されるものと伺っております。
物価の上昇を踏まえまして、基準額や敷居値について、日本経済の拡大にとってこれ非常に重要な見直しでございますので、そしてこれを行っていくことは、さらに力強い日本経済を取り戻すという高市政権にとって、最重要課題の一つではないかと思っておりますので、引き続きしっかり取り組んでまいります。

物価上昇に伴う各分野の料金・制度見直しに関する大臣の見解
浜野議員:ありがとうございます。その上でお伺いいたします。予算、税制だけではなく、例えば電力分野の規制料金、託送料金、さらには鉄道料金、医薬品、薬価などについても検討を進めていくべきと考えております。赤沢大臣、金子国土交通大臣、上野厚生労働大臣にそれぞれ見解をお伺いいたします。
赤沢亮正経済産業大臣:はい、おはようございます。電気の小売の規制料金については本年3月に審査ルールを改正し、次回の料金改定以降は物価や労務費単価の変動見込みを適切に料金原価に反映できるようにいたしました。また電気の託送料金に関するレベニューキャップ制度については、物価変動が反映される仕組みとなっておりませんが、現在、電力・ガス取引監視等委員会の審議会において、物価変動の反映に関する検討が行われております。現在の物価や労務費単価の上昇を適切に反映することで、電力分野の投資を促し、電力供給ネットワークの維持強靭化につながることが期待をされ、GX、DXを進める上でも極めて重要であると認識をしております。こうした観点に加えて、消費者への影響も配慮しつつ、できる限り速やかに検討してまいりたいと思います。

金子恭之国土交通大臣:浜野委員にお答えいたします。将来にわたって鉄道事業が維持されるためには、鉄道運賃に物価上昇等が適切に反映されることが重要であると考えております。国土交通省におきましては、鉄道事業者が運賃改定を行う際に用いる収入原価算定要領について改正を行い、昨年4月より、人件費や物価の上昇をより適切に反映する仕組みといたしました。これによりまして、すでに複数の鉄道事業者に対し、物価上昇等を適切に運賃に反映した運賃改定の認可を行ったところでありまして、今後も引き続き、適時適切に対応してまいりたいと思います。
上野賢一郎厚生労働大臣:はい。医薬品の薬価につきましては、昨今の物価高騰の中で、令和7年度薬価改定におきましても必要な対応を行ってきたところであります。物価高騰への対応も含めた今後の薬価改定のあり方につきましては、国民負担の軽減、創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保といった観点について、バランスよく対応できるよう、中央社会保険医療協議会で関係業界のご意見も伺いながら丁寧に検討を進めてまいりたいと考えています。

規制料金・託送料金・鉄道料金の機動的改定に関する大臣の見解
浜野議員:さらに赤沢経済産業大臣、金子国土交通大臣に関連してお伺いいたします。電力分野の規制料金、託送料金、また鉄道料金などの改定につきましては、長期間要する場合も多く、物価上昇によるコスト増をタイムリーに価格転嫁することはできません。外部環境の変化に応じて機動的に料金に反映できる措置を検討すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
赤沢経産大臣:はい。ご指摘の電力分野の規制料金においては、燃料費の変動を迅速に電気料金に反映する仕組みとして、燃料費調整制度が導入されております。もっとも、燃料費調整制度には上限が設定をされており、2022年度の燃料高騰を受けて、燃料コストの上昇分の一部を電気料金に反映することができない事態も生じたものと認識をしております。一方で、事業者の負担のもとに成立したものではあるが、上限が設定されていることにより、料金の変動速度や変動幅を抑制をし、国民生活への影響を抑制する効果があったことも確認をされています。
現在、資源エネルギー庁の審議会において、燃料費調整制度を含む規制料金のあり方についてご検討を賜っており、ご指摘の機動的な価格転嫁や国民生活への影響の観点も含めて、しっかりと検討を進めてまいりたいと思います。また、託送料金のレベニューキャップ制度における物価変動の反映については、物価変動が反映される仕組みとなっておりませんが、先ほど申し上げた通り、現在、電力・ガス取引監視等委員会の審議会において検討が行われているところ、消費者への影響にも配慮しつつ、できる限り速やかに検討してまいります。

金子国交大臣:先ほどお答えしました通り、国土交通省におきましては、鉄道事業者が運賃改定を行う際に用いる収入原価算定要領について改正を行い、昨年4月より、物価上昇等を適切に反映する仕組みといたしました。その上で、鉄道運賃の改定につきましては、申請から認可まで標準的な処理期間を1ヶ月から4ヶ月と定めておりまして、鉄道事業者から申請があった場合には、運賃改定の妥当性や利用者に与える影響をしっかりと確認をした上で、可能な限り速やかに認可を行っているところであります。
なお、物価上昇などによるコスト増を鉄道事業以外で行われているように、よりタイムリーに価格転嫁する仕組みについては、ICカードシステム等の改修などに一定の期間を要することや、定期券でのご利用も多いといった鉄道固有の事業や利用者の利用実態を踏まえ、慎重に見極めることが必要であると考えております。国土交通省といたしましては、引き続き、鉄道事業者や利用者の声を伺いながら適切に対応してまいります。

レベニューキャップ制度の物価上昇対応に関する経産大臣の見解
浜野議員:ここから全て赤沢経産大臣にお伺いいたします。2問お伺いいたします。現在、託送料金を5年単位で設定する仕組みであるレベニューキャップ制度の物価上昇への対応が議論されております。現在議論されている内容は、送配電事業者が一般施工水準で施工業者へ発注し、支払いをおこなうことができる仕組みにつながると考えているのか、見解を伺いたい。
さらに、今回の制度措置を講じた後も、それが実態に即したものになっているのか、施工業者の安定した人材確保につながるのか、継続的に検証すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
赤沢経産大臣:はい。ご指摘のレベニューキャップ制度については、物価変動が反映される仕組みとはなっておりませんが、現在、電力・ガス取引監視等委員会の審議において、物価指数等の客観的な指標の適用等を含め、物価変動の反映に関する検討が行われているところでございます。送配電事業者が施工業者に発注し、適切な対価を支払うことを通じて、送配電事業の安定的な工事施工力の維持につなげていくことは重要であり、そうした観点に加えて、消費者への影響も配慮しつつ、できるだけ速やかに検討をしてまいりたいと考えております。
その上で、ご指摘のレベニューキャップ制度については、申し上げた通り、物価指数等の客観的な指標の適用等を含め物価変動の反映に関する検討が行われているところでございまして、このレベニューキャップ制度に関して物価変動の反映に関する措置を講じた後においても、電力・ガス取引監視等委員会の審議会において、まさに委員ご指摘の通り、施工業者の安定した人材確保の観点も含め、送配電事業者の投資計画に関する実績等について、継続的に検証を行っていくことは当然に必要なことであると考えてございます。

安価で安定的なエネルギー供給の確保に関する経産大臣の見解
浜野議員:引き続き赤沢経産大臣に2つお伺いいたします。安価で安定的なエネルギー供給の確保についてお伺いいたします。エネルギーといえば電力という風になりがちでありますけれども、実は最終エネルギー消費のうち電力消費は3割未満であります。7割は石油、石炭、天然ガスの直接燃焼によってエネルギーを確保していくという現実を押さえておく必要があります。化石燃料について、脱炭素化しながら有効に活用していくという政策であるべきであると考えますが、見解をお伺いいたします。
関連をいたしまして、資源開発企業を対象として減耗控除制度、海外投資等損失準備金制度などの租税特別制度が設けられております。極めて重要な制度だと考えております。租税特別措置を本則化することについても真剣に検討すべきだと考えておりますが、見解をお伺いいたします。
赤沢経産大臣:化石燃料は、足元で我が国のエネルギー供給の大部分を担う重要なエネルギー源であることはご指摘の通りでありまして、安定供給を確保しつつ、脱炭素化に向けた現実的なトランジションを進める必要がございます。まずは、安定供給を確保するため、引き続き資源外交、国内外の資源開発、供給源の多角化、危機管理、サプライチェーンの維持強靭化等に取り組んでまいります。
その上で、CO2排出を削減するため、電源の脱炭素化と合わせて、製造業の電気炉導入など熱需要の電化に取り組むとともに、鉄、セメント、石油精製、化学等のCO2多排出分野では、天然ガス等への燃料転換等に加え、水素利用やCCUSの活用を推進してまいります。(補足:「CCUS」とは二酸化炭素(CO₂)の排出を減らすための技術の総称で、単なる削減ではなく、CO₂を回収して利用したり貯蔵したりする技術です。)
もう1点お尋ねになりましたが、委員ご指摘の減耗控除制度や海外投資等損失準備金制度は、石油・天然ガスの資源開発を進めていく上で非常に重要な基盤となるものでございます。その重要性に鑑みまして、減耗控除制度については昨年度の税制改正において令和9年度末まで延長するとともに、海外投資等損失準備金制度については令和8年度税制改正要望において延長要望を提出しているところでございます。一方で、これらの税制は、利用状況を的確に把握した上で、その必要性や政策効果を見極め、関係省庁と必要な協議を実施していく必要があるとも承知をしておりまして、いずれにいたしましても、こうした税制等を通じて引き続き石油・天然ガスの安定供給確保を図ってまいります。

火力発電の活用方針に関する経産大臣の見解
浜野議員:赤沢大臣、最後2問お伺いいたします。火力発電と原子力発電についてお伺いいたします。
火力発電は、再エネの出力変動を補う調整電源であることも含め、電力の安定供給上も必要不可欠であります。低炭素化技術を取り込みつつ火力発電を活用していくことが適切であると考えますけども、見解を伺いたい。
赤沢経産大臣:電力のプロの浜野先生にレクチャーをいただいているような感じになっておりまして、色々勉強になっております。ありがとうございます。
火力発電は現在、電源構成の約7割を占めており、電力の安定供給にとって非常に重要な電源でございます。また、天候による再エネの出力変動等は火力発電で補っており、再エネの導入拡大を実現する上でも重要な役割を果たしております。他方、CO2を排出するという環境面での課題があるため、第7次エネルギー基本計画において脱炭素型の火力への置き換えを進めていく方針をお示しをしております。具体的には、安定供給に必要な発電容量は維持確保しつつ、非効率な石炭火力を中心に発電量を削減をし、脱炭素への移行手段として比較的CO2排出量の少ないLNG火力の確保を進めてまいります。また、水素、アンモニアやCCUS等を活用した火力発電の脱炭素化も引き続き推進をしてまいります。

原子力発電の活用方針に関する経産大臣の見解
浜野議員:原子力についてであります。国民民主党は増え続けていく電力需要に対応するため、原子力発電について新増設、リプレースも含めて推進していく立場であります。政府としては、各地の原子力発電所の再稼働を後押しするとともに、新増設、リプレースに向けて原子力の将来の開発規模を示すことが重要と考えます。見解をお伺いしたいと思います。
赤沢経産大臣:原子力はエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源であり、政府としては、再生可能エネルギーとともに最大限活用していく方針でございます。再稼働に向けては、引き続き、審査知見の共有や人材の相互支援など事業者間の協力を強化するよう産業界を指導していくとともに、地域の皆様のご理解をいただくため、国が前面に立って必要性等を丁寧に説明してまいります。また、事業者の予見性向上の観点から、現在、国の審議会において、原子力の開発見通しや将来像について検討が進められております。引き続き、次世代革新炉への建て替えに向けて、こうした議論を深めてまいりたいと考えてございます。

浜野議員:これで質問を終わらせていただきますが、大経済学者のケインズが、危険なのは既得権ではなく思想だということをおっしゃったということをある論説で私は知りました。全くもってその通りだと思います。思想がやはり社会を決めるとということだと思います。くどいようですが、財政健全化、株主価値最大化というこの思想が正しいのかどうか、高市総理なら冷静に検証していただけると思いますので、それをお願い申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。
