プライベート・エクイティ資本主義が世界を食い尽くす
ビジネスモデルや手法を解説するのみならず、代表的、象徴的なターゲット業種に焦点を当てて、豊富な事例を検証。
法の抜け穴や政府の支援を悪用し、買収した企業を破綻に追い込みながら富を搾取する「略奪」のカラクリを暴く。
同時に、暴走を食い止める具体的な改革案も提示する。
リーマンショック以降勢いを失った投資銀行に代わって、プライベート・エクイティ(PE。KKR、ブラックストーン、カーライルなどの投資ファンド)が金融支配、金融化の先兵として猛威を振るっている。
2021年、PEは、GDPの約5パーセントに相当する、1.2兆ドルもの企業買収を行った。 そのターゲットは幅広く、スーパーマーケットなどの小売業者から、飲食店、賃貸住宅、医療機関、介護施設、果ては大学や刑務所にいたるまで触手を伸ばしている。
もはや、「知らぬ間にPEに囲まれて暮らしている」と言っても過言ではない状況だ。
そして、金融危機の火種として最近注目を集めている「プライベート・クレジット」 の担い手も、やはりPEである。
本書は、PEが庶民の生活にいかに広く深く食い込み、悪影響を及ぼしているか、そしていかに格差拡大やシステミックリスク拡大に寄与しているかを明らかにしていく。
PEのビジネスモデルや手法を解説するのみならず、PEの代表的、象徴的なターゲット業種に焦点を当てて、豊富な事例を検証。
また、さまざまな政府機関がPEの所業を黙認あるいは後押ししてきたことを暴露する。
最後に、いわば「PE資本主義」ともいうべきものをどのように修正すべきか、提言する。
【主な内容】
序論 富の独占、再び――われわれは残酷な「第2次金ぴか時代」に生きている
【第1部 彼らはいかにして富を吸い上げるのか】
第1章 他人の金で儲ける――失敗しても損失は軽微、成功すればリターンは無限大
第2章 持ち家の夢を打ち砕く――戸建て住宅を大量購入し、賃貸住宅化して家賃をつり上げる巨大悪徳家主
第3章 トイザらスの倒産は本当にアマゾンのせいだったのか――買収先企業を破産に追い込んで、骨の髄までしゃぶり尽くす
第4章 高齢者の命を蔑ろにして儲ける――極限まで人員削減された「危険な介護施設」と、狡猾な責任逃れの手口
第5章 医療の質より目先の利益――あなたの健康と財布を脅かす医療現場の乗っ取り
第6章 次の金融危機の主役に名乗りを上げる――時限爆弾は年金、保険、プライベート・クレジット
第7章 逃げ場のない「究極の顧客」――刑務所ビジネスで暴利をむさぼる
【第2部 ルールを書き換える――法律と政治を操る巨大な影響力】
第8章 弱者を狙い撃ちし、法廷で狩る――自分たちは裁判を起こせるが、相手は起こせない強制仲裁の罠
第9章 公共サービスを破壊する――水道、救急、消防が彼らに売り飛ばされた、民営化の悲惨な結末
第10章 カネで政治家を買う――議会を意のままに操る「最強のロビー活動」
【第3部 怪物にどう立ち向かうか――公正な社会を取り戻すために】
第11章 われわれがなすべきこと――彼らの横暴を許してきたわれわれこそが、それを止めることができる
第12章 行動を起こそう――公正な社会を取り戻すための処方箋
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あらゆる人がその実態を理解する必要がある
2026年9月20日に日本でレビュー済み元連邦検察官による極めて丹念な調査・情報収集に基づく分析。PEは日本でもかなり存在感を高めてきており、米国における惨状はもはや対岸の火事ではない。短期的な収益を求めてあらゆる領域に触手を伸ばすという生態から、あらゆるセクターの多くの人にこの実態を理解してもらいたいと感じた。
本書に登場するPEの典型的な手法を以下に紹介する:
①不動産のリースバック:買収対象企業の不動産を即座に売却させ売却益を吸い上げた上、リースバックし、対象会社に賃料を永続的に支払わせ続ける
②配当リキャピタリゼーション:買収先企業の借金を原資にPEへの配当を強要する
③戦略的破産:従業員、退職者、債権者への債務支払い回避
④提携の強制:PEの保有する企業との取引の強要
⑤租税回避:2&20の成功報酬20%はキャピタルゲイン扱い、タックスヘイブンの活用
⑥ロールアップ(買収・集約):競争の削減を通じた寡占・独占によって消費者に対する価格引き上げ、従業員に対する賃金引き下げ
⑦経営効率改善:レイオフ、品質カット、値上げ
PEによるLBOを通じて買収された会社の20%が10年以内に破産している(買収されなかった会社の破産率は2%)。筆者は、繰り返し「潤沢なキャッシュフローのあるビジネス」と「サービスを受けることに選択の余地のない囚われの聴衆」の組み合わせがPEのターゲットとなっていると指摘している。具体的には、小売・不動産賃貸・病院・救急・消防・介護施設・水道・刑務所・大学などが挙げられている。
米国に端を発した世界金融危機の後にゴールドマン・サックス等の投資銀行に代わって金融経済を主導してきたのがPEであり、近年ではプライベート・クレジットバブルも作り出している。本書を通じて米国社会の惨状を目の当たりにすることになるが、これほどの惨状になるまで米国内で社会的な問題にならないのだろうかと思ってしまう。トランプ2.0を生み出した社会的分断の背景にもPEの活動拡大があると思えてならない。
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PEファームを本来の役割に引き戻すために
2026年9月16日に日本でレビュー済みこの本から抜粋したWEB記事に、”私たちがやるべきことは、資本主義そのものを打倒することでも、金融業界全体を否定することでもない。PEファームを本来の役割「企業に成長資金を提供する、地味で退屈な存在」へと引き戻すだけでよい”とあったが、まさにその通りと思う。健全な形での資本主義社会を維持しなければ、社会そのものが崩壊してしまう。
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行き過ぎたアメリカの資本主義の実態
2026年9月2日に日本でレビュー済み行き過ぎた資本主義の醜悪な実態を米国のプライベートエクイティに焦点を当てて膨大なデータと共に暴いた執念の力作。100%鵜呑みにする必要はないと思い、かつある程度弱肉強食の世界であることは理解するものの、政治家も制御出来ないパワーとなっている状況に恐怖心すら覚える。最後の「私たちにできること」の筆者のメッセージのアメリカ人の強さみたいなものが救いとなった。これだけ複雑で専門的な内容に対して丁寧で違和感のない自然な翻訳も秀逸