試合がないのに3万人が集まる…儲からないサッカースタジアムを1000億円で作ったジャパネットの綿密な計算
「身の丈に合ったスタジアム」しか道はない
直近でハレーションが起きた秋田市の場合は、いまの観客動員数(「ブラウブリッツ秋田」は1試合平均4953人)に見合う「収容人数1万人以下」のスタジアム計画を地元が提示したところに、Jリーグ側がライセンス交付規則を盾に「(1万人以下収容のスタジアム建設は)志が低い」と発言したことで、交渉に立っていた秋田市長が一挙に態度を硬化させた。
地方のサッカークラブが根を張る多くの地方都市は、後ろ盾となるような大企業が存在せず、「民設民営」「公設民営」への壁は、きわめて高い。一方で、Jリーグは長崎スタジアムシティや各地の大型スタジアムの建設事例(エディオンピースウィング広島・パナソニックスタジアム吹田など)を盾に、強気で杓子定規なライセンス基準を求めすぎているのではないか。
地方都市では、長崎のような大型スタジアムをジャパネットのような企業が支えて建設できるケースは数少なく、実際はその地方の実情に合った「身の丈スタジアム」建設を急ぐほうが、現実的ではないか。「アシックス里山スタジアム」も「収容人数5000人・将来的に1万5000席まで増席可能」という収容能力で建設した上で、順調なチケット販売を踏まえたうえで、現在3500席増席の工事を進めているという。
どの県にもジャパネットのような篤志家がいる企業はなく、スタジアムシティのような巨大な施設を建設できるクラブばかりではない。Jリーグもスタジアム建設を促進するのであれば、長崎・広島だけでなく、今治のような事例を地方クラブに勧めるような選択肢があっても良いのではないか。
懸念された"目に見える課題"はクリア
最後に、スタジアムシティの課題について考えてみよう。
開業当初から人波による混雑が懸念されたものの、JR長崎駅までの遊歩道「Vロード」を設置するなど「クルマを利用しなくていい」環境を整備。試合終了後もフードコートが営業を続けることで、帰る人々がいっせいに長崎駅に向かわないように分散した。
また、スタジアムシティを出て向かう先も「JR長崎駅」「ココウォーク(バスターミナル併設)」そして「スタジアムシティホテルに宿泊」と多様な選択肢があったことで、サッカーや大規模イベントにありがちな「行列が進まず帰れない問題」を解決した。
また地元が懸念していた渋滞問題も、駐車場を「V・ファーレン長崎試合日など大規模イベント開催日は完全予約制(観戦・鑑賞しない場合でも要・予約)」にしたことで、クルマでの来場自体を大幅に抑制したことで、大きな渋滞は起きていない。
もっともこの場所は、バス・路面電車が1日3000本近くも目の前を通過するような立地であり、環境としては「ある程度恵まれていた」ともいえる。
しかし、それ以上に気になるのは、スタジアムシティを建設したことによる「ジャパネットの経営リスク」だ。
成功の裏にある"見えないリスク"
「長崎の地域創生のために」スタジアムシティを建設した"志の高さ"は誰しもが認めるところだが、年間売上2725億円(2024年12月期・過去最高)の会社が1000億円を投じ、かつ「回収まで25~30年」かけるという判断は、やはり「ハイリスク」と言わざるを得ない。
しかもスタジアムシティの場合は、「イベント・集客企画の頻発」かつ「V・ファーレンのJ1残留」といった課題を、人口減少が進む長崎市で行い続ける必要がある。いま長崎県では、ジャパネット以外にスタジアムシティやサッカーへの投資を続けられる企業はない。
ジャパネットの支援前に経営危機に瀕していたV・ファーレン長崎の将来のためにも、長崎の希望の星・ジャパネットが勢いを保ち続け、スタジアムシティは通販の黒字を消さないレベルの採算をキープすることが必要となる。
もっともジャパネットは、「数百人規模の社員旅行で、イギリス・プレミアリーグ観戦」という、気の遠くなるような利益の使い方ができるほどに、企業風土にサッカーが根付いている。もしこれが上場企業なら、間違いなく経費を巡って株主総会が紛糾するところだが……これからも社を挙げて、サッカー関連事業を進めていくことになるだろう。
リスクをとってでも成長を目指すジャパネットの収益源として、スタジアムシティが急成長することを願いたい。そして、スタジアムシティの売り上げを左右しそうな、V・ファーレン長崎の戦いぶりにも注目だ。



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