特別寄稿/評論家・中野剛志/高インフレ対策は「資金の制約ではなく実物資源の制約を見よ」
最近のインフレの高進を見て、「やはりMMT(現代貨幣理論)は間違っていた」などと小躍りする愚かな経済学者が現れるのではないかと思っていたら、案の定、山のように出てきた。予想されたこととはいえ、あまりに分かりやす過ぎてうんざりする。
改めて、MMTの要点を簡単に説明しておこう。MMTは、貨幣とは国家が創造したものであるという理解から出発する。政府は、通貨(円やドルなど)を法定する。次に、国民に対して、その通貨の単位で計算された納税義務を課す。そして、政府は、通貨を発行し、その通貨を租税の支払い手段として定める。その結果、通貨には、納税義務の解消手段としての需要が生じるようになり、国民は通貨に額面通りの価値を認めるようになる。そして、その通貨を民間取引や貯蓄の手段としても利用するようになる。こうして、通貨が流通するようになるのである。
この場合、国民は納税を行なうためには、事前に通貨を保有していなければならない。その通貨を発行するのは政府である。政府が通貨を発行し、それを支出して、国民に供給しなければ、国民から税を徴収することはできない。財政支出が先であり、徴税は後なのである。すなわち、税は、財政支出の財源ではないのだ。これは税に関する通俗観念を覆すものであり、それゆえ多くの人々はMMTに強い抵抗感を覚える。しかし、これは、財政支出の財源(通貨)は政府が自ら創造していることから導かれる当然の論理的帰結に過ぎない。
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