消費税は「関税」岩本沙弓さんが解説 ピケティ教授が指南 全商連[全国商工新聞]
ピケティ教授が指南 消費税は「関税」岩本沙弓さんが解説
※この記事は2015年3月16日付として全国商工新聞に掲載され、2025年2月26日に一部改訂を行いました。
フランスの経済学者トマ・ピケティ教授が「欧州の付加価値税が高いのは福祉財源のためではなく関税だから」(2月23日号既報)と指摘したことについて、「詳しく知りたい」との声が寄せられました。付加価値税導入の背景や役割、国際的な流れについて大阪経済大学客員教授(当時)の岩本沙弓さんに聞きました。
輸出企業への「補助金」
―― 世界で付加価値税が導入されるようになった経緯は
1954年にフランスが初めて体系的に採用したといわれています。当時は、第2次世界大戦が終わり、戦勝国だった米国が世界最大の貿易大国でした。欧州も戦勝国でしたが、戦地になったので物質的な資産は喪失。その中から自国の経済を盛り立てるためには輸出企業に頑張ってもらうしかないという発想で補助金を出していました。しかし、ガット(GATT)という関税と貿易の協定ができたとき、自国企業だけに補助金を与えるのは自由な貿易に反するとの理由でガットに抵触してしまったのです。
それでも何とかして自国の輸出企業に補助金を与えられないかと、フランス政府が考えたのが付加価値税といわれています(※ 税理士・湖東京至氏 解説参照→記事)。初めから輸出企業を援助するという目的が強い税金でした。現在、140カ国余り(2024年1月時点150カ国以上=国税庁調べ)で付加価値税を採用していますが、 消費税と言っているのは、日本をはじめ少数に限られます。
―― 付加価値税と補助金の関係は
付加価値税にはリベートを渡せる機能があります。日本では還付といわれています。例えば日本の輸出企業が国内で製品を造るときには部品の調達先に消費税を払っています。それを米国に輸出するときは、日本の消費税を米国の国民から徴収できないという理由でゼロ税率になっています。国内で消費税を払っているのに、海外からは受け取れない。消費税は自分が受け取った消費税から払った消費税を差し引いて納税する仕組みです。そこで国内で支払ったとされる仕入れ分を還付するのですが、消費税では完璧な転嫁は流通のどの段階においてもできません。であるなら、戻してもらうお金は還付ではなく補助金の役割を果たすことになりかねないと米国などは指摘しています。
輸入品を制限する効果
―― 米国には付加価値税がありませんね
米国は今から40年ほど前、大統領の諮問機関として企業課税特別委員会を立ち上げ、付加価値税の対応を議論しました。第1回目の報告書では付加価値税にリベート機能があるのは特定企業の優遇策になるので自由貿易や公平な税制を掲げている米国としては採用するわけにはいかないと結論づけ、それ以来、連邦政府としては採用していません。
―― 付加価値税が関税の役割を果たしているとはどういうことでしょうか
例えば米国とフランスの貿易を考えると、20%の付加価値税があるフランス製品と付加価値税がない米国製品を消費者が購入するときに価格に差が生じます(表)。米国のリベートの扱いに関する言い分について大まかな話をすると、いずれも価格を100ドルとします。還付を受け取れば、その分フランス製品は米国内で80ドルまで値下げをすることも可能となり、米国製品はフランス国内では120ドルとなってしまいます。米国から見ればフランスの付加価値税で勝手に価格が上げられ、20%の付加価値税は実質、関税になってしまうわけです。ピケティ教授が欧州の付加価値税を関税と言ったのは、輸入品を制限して自国の産業を保護するという関税と同じ効果があるという意味です。
日本の消費税も米国からすれば「非関税障壁」と見なされるわけです。例えばTPPは関税を引き下げよという話ですから、消費税増税で引き上げられた分を取り外す手段にもなりえます。

優遇税是正 国際協調で
―― 欧州のように社会保障が充実していれば消費税を上げてもいいという意見があります
欧州は付加価値税が高いから社会保障が充実しているわけではなく、再分配が機能しているからです。例えば、子どもがいる現役世帯のうち大人が1人いる世帯(いわゆるひとり親家庭)の相対的貧困率を見た場合、OECD(経済協力開発機構)平均が30・8%(平成24年版「厚生労働白書」より)のところ、日本は加盟国中でも突出し最悪の58・7%となっています。税金や社会保険料を払う前の「再分配前」と税金や保険料を払い、児童手当や生活保護など政府から給付を受けた後の「再分配後」では、後者の方が貧困率は低くなるのが当然であるにもかかわらず、日本は再分配後の貧困率が高いという、あってはならない状況です。
日本の場合、社会保障を充実させると口では言いますが、再分配などの見直しがされないまま財源がないからと、とりあえず消費税を上げる。その結果、弱い人たちへの負担が重くなり、格差が拡大しています。
―― 国際的な統一税制をめざす動きが加速していますね
付加価値税や消費税はグローバル経済が進む前の古いタイプの税制です。モノも人も活発に世界中を行き交うグローバル化の中で、昔のように国境で税制を何とかしようという発想がすでに限界にきています。
法人税収や所得税収が上がってないのは世界の共通の問題であり、日本ではその穴埋めの消費税が使われている状況です。そうした事態に対応すべくOECDが2013年7月、BEPS(税源浸食と利益移転に関するアクションプラン)を公表しています。グローバル企業が国際的な税制の隙間や抜け穴を利用した節税対策によって税負担を軽減しているという問題点を指摘し、15項目の対策を示しています。その中で「有害税制への対抗」として加盟国の優遇税制を審査することを打ち出し、特定企業への優遇税制の是正に動き出しています。
消費税などの税制問題は実は国内だけの問題ではありません。世界中のいわゆる一般国民が不公平税制のあおりを受けているわけですから、世界的な問題と捉え、国境を越えてその是正に取り組むべき問題との認識を持つことが大切で、それが問題解決にもつながると思います。
全国商工新聞(2015年3月16日付・2025年2月26日 一部改訂)
22年度 トヨタなど輸出大企業20社に消費税還付1.9兆円
インボイスで輸出還付金を正当化
トヨタ自動車など輸出大企業20社が国から還付された消費税還付金額が1兆9千億円に達することが分かりました。元静岡大学教授の湖東京至税理士が、2022年4月~23年3月期(一部22年1月~12月期)の決算に基づき、各企業の輸出割合などを推計して算出しました。湖東税理士は、「輸出還付金を正当化するためにインボイス(適格請求書)が導入された」と告発します。
元静岡大学教授・税理士 湖東京至さんが解説
「今までの帳簿方式の何が悪いのか」「なぜ導入するのか分からない」との疑問も出される消費税のインボイス制度。歴史をひも解くと、狙いの一つは、輸出大企業に消費税を還付する仕組みを支えるため―との事実が浮かび上がります。
ゼロ税率適用で
そもそも輸出企業は、なぜ還付金をもらえるのか。
「消費税の税率は?」と問われた時、私たちは「標準税率の10%と軽減税率の8%」と答えます。ところが、日本にはもう一つ、「0%」という税率が存在します。0%は輸出売り上げだけに適用される、普段見ることのない税率です。この0%を適用して、トヨタの還付金額を計算してみます。トヨタの輸出売り上げは約10兆6千億円です。
①10兆6千億円に0%をかけると、消費税額はゼロ円②トヨタの国内販売分の売上金額は3兆5千億円。これには10%の消費税がかかるので、消費税額は3500億円③消費税が含まれている仕入れや外注費、諸経費が8兆8千億円あり、これにかかる消費税分(仕入税額控除額)が8800億円④売り上げにかかる消費税額3500億円から仕入税額控除額8800億円を差し引くと答えはマイナス5300億円。税務署に支払う額はマイナスとなり、逆にトヨタには、税務署から還付金として5300億円が支払われます。輸出還付金がもらえるのは、ゼロ税率と仕入税額控除方式があるためなのです。
仏で初めて導入
輸出ゼロ税率は1948年、フランスで初導入されました。フランスには1936年に導入したメーカーの製品に課税する「製造業者売上税(税率10%)」がありました。メーカーの売上高に10%課税する単純な売上税でしたが、48年にメーカー側が「仕入れた製品にも売上税がかかっている。二重課税だ」と文句を言いました。
加えて同年1月に「ガット協定(関税および貿易に関する一般協定)」が締結され、仏政府は輸出企業に補助金を出せなくなりました。仏政府と財界が「輸出企業の優遇を」との要請に応えて編み出したのが、輸出販売にゼロ税率を適用し、仕入れに含まれている売上税を還付する仕組みでした。
その際、還付するのだから、仕入れ先から本体価格と税金を明記した請求書をもらい、それを還付の証明書に使うことにしました。これがインボイス制度の原型です。インボイス制度の原型は、輸出企業への還付金の正確性を保証するためのものだったのです。
間接税に見せる
フランスは54年、「製造業者売上税」を名称変更し、企業の付加価値に課税する直接税である「付加価値税」を導入。ガット協定では直接税には輸出還付金制度が認められないので、「付加価値税」を間接税と定義し、還付しても協定に違反しないと主張しました。
そのため、企業の決算とは関係なく、事業者登録番号を付したインボイス(請求書)を集計して付加価値税の納税額を計算するようにしました。つまり、インボイス制度導入の動機は、直接税である「付加価値税」を間接税らしく見せるようごまかすためだったのです。
増税への布石に
そもそも付加価値税・消費税の原型は1950年、「シャウプ勧告」で有名な米国のシャウプ博士が日本で提案した税金です。
シャウプの付加価値税は、事業税に代えて赤字でも取れる税金として考案されました。そこでシャウプは企業の利益(欠損金)に人件費と利息、地代家賃を合計した金額を付加価値として課税しました(「加算法」)。
シャウプは、もう一つの計算方法として、年間売上高から年間仕入れや諸経費を差し引く「控除法」を提案。これが「仕入税額控除方式」の原型です。二つの方法による税額は同じとなります。
シャウプの付加価値税は直接税なので、間接税の特徴である価格への転嫁も輸出還付金制度もありません。その代わり、事業者免税点制度や、帳簿・決算から納税額を計算する帳簿方式、申告・納税も法人税や所得税と同時期に行う―など、直接税としての特徴を持っていました。
赤字でも納税しなければならないシャウプの付加価値税は事業者の猛反対を受け、一度も実施されないまま54年に廃案となります。
日本の消費税はシャウプの付加価値税とそっくり同じ。違うのは、直接税では許されない輸出還付金制度があること、価格転嫁をしているように見せかけていること、インボイス制度を導入したこと―です。
インボイスは、「増税への布石」とも言われています。消費税が増税されれば、還付金も増えることは当然です。
不公平極まりない輸出還付金制度の廃止と、この制度と軌を一にした素性の悪いインボイス制度の廃止は、公平、公正な税制の実現のために焦眉の課題です。
還付金の推算で消費税2割が大企業に
多くの中小業者が、物価高や「ゼロゼロ融資」の本格返済、消費税インボイス導入による新たな税負担と事務負担などにあえぐ下での巨額還付に怒りの声が高まっています。
還付金上位20社には、1位のトヨタ自動車をはじめ、日産自動車(2位)、本田技研工業(3位)、マツダ(4位)など、大手自動車メーカーがずらり。キヤノン、日本製鉄、日立製作所などの経団連の歴代役員企業も多く含まれます。
還付金の合計額は税率が10%に上がった19年10月以降、年間7兆5千億円程度になっています。輸出大企業への還付金は、このうち約90%と見られることから、約6兆7500億円に達します。これは、中小業者ら全事業者が納めた消費税の約2割が輸出大企業に還付されていることを意味します。

税務署が赤字に
全国に12カ所ある国税局の統計から、輸出大企業への巨額還付金で消費税収がマイナス(=赤字)となっている税務署があることが分かります。
赤字額が第1位(21年4月~22年3月期)の愛知・豊田税務署では、トヨタやその他の輸出企業に還付された金額から、同税務署管内で中小業者らが納めた消費税額(約676億円)を差し引いた赤字額は4943億円となり、トヨタ1社への還付金額は、約5300億円となって先の推計とも一致します。








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