以下、『現代イギリス経済学の群像―正統から異端へ』1989/4/27 根井雅弘
224-5頁より
彼[カレツキ]はマルクスの再生産表式をどのように自らの理論に取り入れたのだろうか。ここでは それ
を簡単に説明しておきたいと思う。
まず、経済をカレツキ的に、投資財を生産する第I部門、資本家の消費財 を生産する第II部門、そして賃金財を生産する第III部門の三つに分割しよう。
各部門の産出の価値Vは、利潤Pと賃金Wの和に等しいから、
Vi=Pi+Wi (i =1,2,3) (1)
第III部門の資本家は、産出の価値のうちのW3にあたるものをその部門内 の労働者へ、残りのP3にあたるものを第I・II部門の労働者へ販売すると考えら れるから、
P3=W1+W2 (2)
ここで、第I部門と第II部門の産出の価値を合計すると、
V1+V2=P1+P2+W1+W2 (3)
を得るのだが、(2)式を(3)式に代入すると、次式が得られるのが ただちにわかるだろう。
V1+V2=P1+P2+P3 (4)
(4)式は、経済全体の利潤Pが、投資財の価値Iと資本家の消費財の価値CCの和に等しいことを示している。こうして、本文で述べたような、P=I十CCというカレツキの命題が得られるわけである。
Cf.,Josef Poschl and Gareth Locksley, Michal Kalecki : A Comprehensive Challenge to orthodoxy,
in J. R.Shackleton and Gareth Locksley eds.,Twelve Contemporary Economists,1981,p.157.
所得 支出
資本家の所得(P) 投資(I)
資本家の消費(CC)
労働者の所得(W) 労働者の消費(CW)
労働者はその所得をすべて消費する(すなわち、W=CW)と仮定されているから、
P=I十CC
資本家は、利潤を決定することは出来ないがゆえに、この式は、I十CCがPを決定することを示している。
両辺からCCを減じると、
S=I
I(投資)がS(貯蓄)を決定する。しかも、S=Iは利子率から独立している。
(同188-9頁より、一部改変)
カレツキの再生産表式は、マルクスの再生産表式の価値部分のみを表現しているもので、 現物部分の存在を無視している。
Michal Kalecki
The Marxian equations of reproduction and modern economics 1968
https://doi.org/10.1177%2F053901846800700609 有料
(「利潤の決定要因」1933,1954内の記述を後に再度詳述したもの)
カレツキは現物経済を無視したが、投資家と労働者という階級制度のプレイヤーという実態を重視している。
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