「経済学は腐りかけている」評論家・中野剛志氏が主流派経済学への批判を続ける理由
インタビュー前編では、主流派経済学の矛盾点について、哲学的な観点から評論家の中野剛志氏が解説した。ただ、致命的な欠点がありながらも、主流派経済学は経済学の中で長らく主役の座に居座り続けている。主流派経済学はなぜ「主流」で居続けられるのか、異端派経済学が主流派経済学にとって代わる可能性はあるのか──。『政策の哲学』(集英社)を上梓した中野氏に、引き続き話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター) 【写真】主流派経済学を築いたミルトン・フリードマン 【前編】主流派経済学には「哲学」がない! 『政策の哲学』の中野剛志氏が矛盾だらけの主流派経済学を斬る ──主流派経済学に対して、いわゆる異端派経済学はどのような学問なのですか。 中野剛志氏(以下、中野):異端派経済学と一言に言っても、ポスト・ケインズ派、制度派、マルクス主義経済学、オーストリア学派、社会経済学、フェミニスト経済学などさまざまな学派が存在しています。 これら異端派経済学に共通していることは、「現実とは何か」「現実的な社会とは何か」「現実的な人間とは何か」を突き詰めて議論している点です。もちろん、学派が違えばその切り口も異なりますので、論争が起こることもあります。 それでも、この複雑怪奇な経済の真理を追究しているという意味で、異端派経済学は「科学」です。 そもそも、経済学者の祖であるアダム・スミスは哲学者です。20世紀前半頃までは、経済学は政治学や社会学とも密接につながっていました。経済は人間の活動の一つですので、政治や社会の文脈で議論する必要があったためです。 ──主流派経済学は、いつ、どのようにして登場したのでしょうか。 中野:1980年代以降、経済学界において支配的になりました。 第二次世界大戦終結後、経済学の理論はケインズ主義的な考え方が主流でした。ただ、それは方法論的個人主義のような前提に則って、ケインズ的な理論を展開する「ケインズもどき」とも言えるような学派でした。つまり、ケインズ自身の理論とはまったく別物です。 この「ケインズもどき」は1970年代に発生したオイルショックによるインフレを説明したり、処方箋を与えたりすることができず、経済学界における支配的地位を失いました。 代わって注目を集めたのは、ミルトン・フリードマン率いる新古典派経済学です。これが今の主流派経済学へと発展し、学界や政策担当者の間に広く浸透していったという流れです。 ──主流派経済学は、1970年代のインフレを解決できたのでしょうか。
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