2024年3月2日土曜日

ボーモルのコスト病 - Wikipedia

ボーモルのコスト病 - Wikipedia
ボーモルのコスト病

《たしかに物価上昇のひとつの原因として、成長率が高く需要が強いために起るデマンド・プル・イ
ンフレがある。しかし、わが国の物価上昇のおもな原因は、そのようなものではない。生産性の上昇
がいちじるしい産業と、そうでない産業との賃金が同じように上昇するために起る、いわゆる生産性
格差インフレが問題なのである。》田中角栄、小長啓一『日本列島改造論』1972年 64頁

舞台芸術 芸術と経済のジレンマ 単行本 – 1994/3/1 

ボーモルのコスト病

ボーモルのコスト病 (Baumol's cost disease) は、経済学用語の一つ。単にボーモル病コスト病とも呼ばれている。ボーモル効果と呼ばれることもある。

経済学者ウィリアム・ボーモルとウィリアム・G・ボーエンによって1960年代に見出された現象である。ボーモルとボーエンの研究は、もともと実演芸術に関してなされた。ボーモルとボーエンは、ベートーベン弦楽四重奏を演奏するのに必要な音楽家の数は、1800年と現在とで変わっていないということを指摘した。つまり、クラシック音楽の演奏の生産性は上昇していない。他方、自動車製造部門や小売部門のような商業部門では、機械や器具の技術革新によって絶えず生産性は上昇している。それに対して、実演芸術や看護、教育のような労働集約的な部門では、人的活動に大きく依存しているため、生産性はほとんどあるいはまったく上昇しない[1][2]。弦楽四重奏の例と同じく、看護師が包帯を交換する時間や、大学教授が学生の文章を添削する時間は、1966年と2006年の間で、短縮されていない。

ボーモルのコスト病は、公立病院や公立大学のような公共サービスの生産性が上昇しないことを説明するためにも用いられてきた。行政活動の多くは、かなり労働集約的であり、国民一人当たりの人員を削減することは難しい。生産性の上昇はほとんど可能ではない結果として、人件費は、国内総生産よりも大きく増大していく。これにより、物価水準の向上により社会全体の賃金が上昇する時、これらのサービス産業は生産性に大きな変化がないままで人件費だけが高まっているため、指定管理者制度などのような公的支援が必要である[3]

脚注

  1. Baumol, W. J.; Bowen, W. G. (March 1965). "On the Performing Arts: The Anatomy of Their Economic Problems". The American Economic Review 55 (1/2): 495–502. doi:10.2307/1816292.none 
  2. ^ Baumol, William J.; Bowen, William G. (1966). Performing Arts, The Economic Dilemma: A Study of Problems Common to Theater, Opera, Music, and Dance. Cambridge, Mass.: M.I.T. Press. ISBN 0262520117. https://archivesofthecentury.org/myportfolio/performing-arts-the-economic-dilemma/ 
  3. ^ "【最新行政大事典】用語集―ボウモルのコスト病とは | ぎょうせいオンライン 地方自治の総合サイト". ぎょうせいオンライン  地方自治の総合サイト. 2022年5月9日閲覧。[リンク切れ]

関連項目[編集]

ウィリアム・ボーモル

ウィリアム・ボーモルWilliam J. Baumol1922年2月26日 - 2017年5月4日)は、アメリカ経済学者。 

ニューヨーク市出身。 

ミクロ経済学からマクロ経済学まで、活躍の範囲は広かった。 

略歴

研究

主な書籍

  • 山田勇藤井栄一 訳『経済動学序説』東洋経済新報社、1956年。NDLJP:3008566none
  • 『経済分析とOR』(上)(下)、福場庸訳、丸善、1966年
  • (アラン・S・ブラインダーと共著)『エコノミックス入門――マクロ・ミクロの原理と政策』、片岡晴雄ほか共訳、HBJ出版局、1988年
  • (アラン・S・ブラインダーと共著)『ミクロエコノミックス入門――市場と制度の経済学』、箱木礼子・片岡孝夫共訳、HBJ出版局、1993年
  • (アラン・S・ブラインダーと共著)『マクロエコノミックス入門――経済原理と経済政策』、川島康男・三野和夫共訳、HBJ出版局、1993年
  • (アラン・S・ブラインダーと共著)『新エコノミックス入門――現代経済の見方』、箱木礼子ほか共訳、HBJ出版局、1994年
  • (ウィリアム・G・ボウエンと共著)『舞台芸術――芸術と経済のジレンマ』、池上惇監訳、渡辺守章訳、芸団協出版部、1994年
  • 『自由市場とイノベーション――資本主義の成長と奇跡』、足立英之監訳、中村保・山下賢二・大住康之・常廣泰貴・柳川隆・三宅敦史共訳、勁草書房、2010年

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ "William Baumol, whose famous economic theory explains the modern world, has died"VOX. VOX Media. (2017年5月4日) 2017年5月6日閲覧。

外部リンク[編集]

0 件のコメント:

コメントを投稿