2024年10月9日水曜日

Notes by h_k - « 抄訳:E. Ostrom (1990) Governing the Commons »

Notes by h_k - « 抄訳:E. Ostrom (1990) Governing the Commons »

« 抄訳:E. Ostrom (1990) Governing the Commons »

加筆:2022年11月24日

修正:2015年04月26日

加筆:2013年10月16日

加筆:2013年10月06日

加筆:2013年10月05日

加筆:2013年10月04日

加筆:2013年10月03日

加筆:2013年09月29日

公開:2013年09月26日

晃洋書房より翻訳書が刊行(2022年12月20日)されます。

国際的なコモンズ研究の主流派において、もはや古典とも言える以下の書籍の一部翻訳(と既存抄訳の抜き書き):

Ostrom, Elinor. 1990 Governing the Commons: The Evolution of Institutions for Collective Action. New York: Cambridge University Press (Political Economy of Institutions and Decisions' Series).

エリノア・オストロム(1990)『コモンズを運営する——集合行為のための制度の進化——』ケンブリッジ大学出版局「制度と決定の政治経済学」シリーズ.

エレノア・オストロム『共有資源管理論』<森脇俊雅 2000: 69>

『共有地の管理』<小野耕二 2001: 88>

[h_kコメント:E. Ostrom (1990)は下でも訳出した第2章の原注23からもうかがえるように、共有資源 common property resource(s) という術語を安易に用いるのを避けようとしている。]

Series editor' preface

シリーズ編者の序文

Preface

序文

Although I have been excited about what one can learn from a concentrated effort to study dozen groundwater basins and the institutions that have evolved for their governance and management over time, such studies alone are not sufficient for the development of a broader theory of institutional arrangements related to the common-pool resources (CPRs). One needs similar information from many other settings to begin to gain the empirical base necessary to improve our theoretical understanding of how institutions work and how individuals change their own institutions. (p. xiv)

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12の地下水水系とそれらの運営と管理のために時間を経て進化した諸制度を研究する集中的な試みからどれほど学ぶことができるかについて私は高揚していたこともあったが、そのような研究だけでは、コモン・プール資源(CPRs)に関連する制度的な取り決めについての、より幅広い理論の発展のためには不十分なのである。どのようにして制度が機能するのか、そしてどのようにして個人たちが自分たちの制度を変化させるのかの、われわれの理論的な理解を改善するために必要な経験的基盤を獲得するのに着手するために、多くの他の状況から[私が研究していた地下水水系についてと]同様の情報が必要である。<h_k訳>

12の地下貯水池と長期にわたるその運営・管理のために発達した制度の研究から相当の知見を得たと思ったけれども、こうした研究だけでは共有水資源の効果的管理運営に関わる制度的しくみというより幅の広い理論的課題には十分ではない。われわれはどのようにして制度が作用するのか、そしてどのようにして諸個人は制度を変更するのかについてのわれわれの理論的理解を改善するために必要な経験的基礎を得るべく、多くの事例から情報を獲得しなければならない。<森脇 2000: 70>

1

Reflections on the commons

コモンズについての諸見解

We do not yet have the necessary intellectual tools or models to understand the array of problems that are associated with governing and managing natural resource systems and the reasons why some institutions seem to work in some settings and not others. (p. 2)

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われわれは天然資源システムを運営したり管理したりするのに関わる一群の諸問題や、なぜある制度がある状況では成功して他の状況では成功しないのかを理解するために必要な知的な道具あるいはモデルを依然として持ち合わせていない。<h_k訳>

われわれは自然的資源システムを管理、運営することに関わる諸問題やある制度があるしくみで機能し、別のしくみで機能しない理由を理解するのに必要な知的道具あるいはモデルをまだ有していない。<森脇 2000: 71>

THREE INFLUENTIAL MODELS

[1.1] 影響力のある3つのモデル

The tragedy of the commons

[1.1.1] コモンズの悲劇

The prisoner's dilemma game

[1.1.2] 囚人のジレンマ・ゲーム

The logic of collective action

[1.1.3] 集合行為の論理

As long as individuals are viewed as prisoners, policy prescriptions will address this metaphor. I would rather address the question of how to enhance the capabilities of those involved to change the constraining tules of the game to lead to outcomes other than remorseless tragedies. (p. 7)

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個人たちが囚人として見なされている限り、政策処方箋はこの隠喩を取り扱うことになる。私はむしろ、[個人たちを]制約するゲームのルールを変えて無慈悲な悲劇以外の帰結へと至る、当事者たちの能力をどのようにして高めるのかという問題を取り扱う。<h_k訳>

個人が囚人と見なされている限り、政策的処方箋もこの暗喩 metaphor を提示するであろう。私はむしろ、拘束的なゲームのルールを変化させることに関与している人々の能力を、冷酷な悲劇以外の結果へと導くために、どのように高めるのか、という問題を提示したい。<小野 2001: 90>

THE METAPHORICAL USE OF MODELS

[1.2] [これらの]モデルの隠喩的使用

When models are used as metaphors, an author usually points to the similarity between one or two variables in a natural setting and one or two variables in a model. If calling attention to similarities is all that is intended by metaphor, it serves the usual purpose of rapidly conveying information in graphic form. These three models have frequently been used metaphorically, however, for another purpose. The similarity between the many individuals jointly using a resource in a natural setting and the many individuals jointly producing a suboptimal result in the model has been used to convey a sense that further similarities are present. By referring to natural settings as "tragedies of the commons," "collective-action problems," "prisoner's dilemmas," "open-access resources," or even "common-property resources," the observer frequently wishes to invoke an image of helpless individuals caught in an inexorable process of destroying their own resources. (pp. 7-8)

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[これらの]モデルが隠喩として用いられるとき、[その]著者は通常、自然の状況における1つないし2つの変数と、モデルにおける1つないし2つの変数との間の類似性を指摘している。もし類似性に注意を喚起することだけが隠喩によって意図されることならば、それ[隠喩]は、図式的な形態で情報を素早く伝達するという通常の目的に資するものである。しかしながら、これら3つのモデルはしばしば、別の目的のためにこそ隠喩的に用いられてきた。自然の状況においてひとつの資源を合同で使う多くの個人たちと、モデルにおいて非最適な結果を生み出す多くの個人たちとの間の類似性は、それ以上の類似性が存在するという印象を伝達するために用いられてきたのだ。自然の状況について「コモンズの諸悲劇」、「集合行為問題」、「囚人のジレンマ」、「オープン・アクセス資源」として、あるいは「共有資源」としてさえも言及することによって、件の観察者[= 著者]はしばしば、自分たち自身の資源を破壊するという不変の過程にとらわれた、自分たちではどうしようもない個人たちというイメージをかきたてようとしているのである。<h_k訳>

これらのモデルが暗喩として用いられるならば、著者は通常、自然の状況における 1, 2 の変数と、モデルにおける 1, 2 の変数との間の類似性を指摘する。類似性へ向けて注意を喚起することが暗喩によって意図されることならば、暗喩ははっきりした形で情報を素早く伝えるという通常の目的に貢献すると言える、しかしながら、これら三つのモデルは頻繁に、他の目的のために暗喩的に用いられてきた。自然の状況下で共同に資源を利用する多くの個人と、モデルにおいて準最適な結果を共同で生み出す多くの諸個人との間の類似性は、更なる類似性も存在する、という見解を伝えるために用いられてきたのである。自然の状況を「共有地の悲劇」、「集合行為問題」、「囚人のジレンマ」、「公開された資源」、あるいは「共有資源」としてすら言及することによって、観察者はしばしば、自分たち自身の資源を破壊してしまう冷厳な過程のうちに捕えられている救いのない諸個人、というイメージを喚起することを望むのである。<小野 2001: 91>

CURRENT POLICY PRESCRIPTIONS

[1.3] 現在の政策処方箋

Leviathan as the "only" way

[1.3.1] 「唯一の」方法としてのリヴァイアサン

Privatization as the "only" way

[1.3.2] 「唯一の」方法としての私有化

The "only" way?

[1.3.3] [本当に]「唯一の」方法なのか?

An alternative solution

[1.3.4] 代替的な解決策

An empirical alternative

[1.3.5] 経験上の代替策

Policy prescriptions as metaphors

[1.3.6] 隠喩としての政策処方箋

Policies based on metaphors can be harmful

[1.3.7] 隠喩に基づく政策は有害なものになりうる

A CHALLENGE

[1.4] 課題

As an institutionalist studying empirical phenomena, I presume that individuals try to solve problems as effectively as they can. That assumption impose a discipline on me. Instead of presuming that some individuals are incompetent, evil, or irrational, and others are omniscient, I presume that individuals have very similar limited capabilities to reason and figure out the structure of complex environment. It is my responsibility as a scientist to ascertain what problems individuals are trying to solve and what factors help or hinder them in these effort. (p. 25)

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経験的現象を研究している制度学派研究者として私は、個人たちはできる限り効果的に問題を解決しようとするものだと想定する。この仮定は私にある規律を課す。一方の個人たちは無能、邪悪または非合理的であり[逆に]他方の個人たちは全知を有している(何でも正しく知っている)と想定するのでなくて、個人たちは[みな]、複雑な環境の構造を推論し理解するのに、とても似通った限定的な能力を持っているのだと私は想定する。どのような問題を個人たちが解決しようとしているのか、そしてどのような要素が彼らを助け、または妨げるのかを突き止めるのが、科学者としての私の責任である。<h_k訳>

経験的事象を研究する制度論者 institutionalist として、私は、諸個人はできる限り効果的に問題を解決しようと試みる、と考える。この過程[ママ:"仮定"の誤記か]は、私にある原則を課す。一定の諸個人は無力か、邪悪か、非合理であるのに対し、他の者は全能である、といったことを仮定する代わりに、諸個人は複雑な環境の構造を推論し理解するための、非常によく似た限定的能力を有していると、私は想定する。諸個人がどのような問題を解決しようと試み、そしてその努力の過程でどんな要素がそれを手助けし、またはそれを妨げるのか、といった点を確認することが、科学者としての私の責任である。<小野 2001: 93>

2

An institutional approach to the study of

self-organization and self-governance in CPR

situations

CPR状況における自己組織化と自己統治の研究に向けた制度論的アプローチ

THE CPR SITUATION

[2.1] CPR状況

CPRs and resource units

[2.1.1] CPRsと資源ユニット

The term "common-pool resource" refers to a natural or man-made resource system that is sufficiently large as to make it costly (but not impossible) to exclude potential beneficiaries form obtaining benefits from its use. To understand the processes of organizing and governing CPRs, it is essential to distinguish between the resource system and the flow of resource units produced by the system, while still recognizing the dependance of the one on the other.

Resource systems are best thought of as stock variables that are capable, under favorable conditions, of producing a maximum quantity of a flow variable without harming the stock or the resource system itself. … Resource units are what individuals appropriate or use from resource systems. (p. 30)

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「コモン・プール資源」という術語は、その利用から便益を得ることから潜在的な受益者らを排除することが費用のかかる(とはいえ不可能というわけではない)ものになるくらい十分に大きいような天然のあるいは人工の資源システムを指す。CPRs[= コモン・プール資源]を組織化し統治する過程を理解するためには、資源システムと同システムによって生産される資源ユニットのフローとについて、一方のもう一方への依存を認識しながらも、この両者を区別しておくことは不可欠である。

資源システムは、良好な条件の下で、そのストックあるいは資源システムそれ自体を害することなく、フロー変数の最大数量を生産することができるようなストック変数として考えるのが最も良い。(中略)資源ユニットは、個々人が資源システムからとり出して、占有したり利用したりするもののことである。<h_k訳>

その利用により便益を得ることから潜在的利用者を排除することが(不可能ではないが)高くつくほどに十分に大きな自然的あるいは人為的資源システム<森脇 2000: 72>

共有資源 common-pool resources <小野 2001: 92>

潜在的受益者たちに対し、その使用によって便益を獲得することから排除することを(不可能ではないにせよ)コストのかかるものとするほどに十分な大きさを有する、自然資源または人工的資源のシステム<小野 2001: 92>

「共同利用の資源」(Common-Pool Resource; 以降、CPRないしコモンプール資源)<新保 2012: 8>

共同利用の資源(Common-Pool Resource)<飯國 2012: 203>

潜在的な受益者(potential beneficiaries)をその利用から排除するためには多大の費用を要する自然あるいは人工の資源系(resource system)<飯國 2012: 203>

資源系(Resource Unit)、資源単位(Resource System)<新保 2012: 8; 飯國 2012: 210>

単位資源(Resource Units、資源システム(Resource Systems)<高村 2012: 12>

The distinction between the resource as a stock and the harvest of use units as a flow is especially useful in connection with renewable resources, where it is possible to define a replenishment rate. As long as the average rate of withdrawal does not exceed the average rate of replenishment, a renewable resource is sustained over time. (p. 30)

>>

ストックとしての資源とフローとしての利用単位の収穫物とのあいだの区別は、再生可能資源との関連で特に有用で、そこでは補充率というものが定義できる[からである]。平均の取り出し率が平均の補充率を超過しないかぎりは、再生可能資源は時を経ても維持される。<h_k訳>

Following Plott and Meyer (1975), I call the process of withdrawing resource units from a resource system "appropriation." (p. 30)

>>

Plott and Meyer (1975) に従って私は、資源システムから資源ユニットを取り出す過程を「占有」と呼ぶ。<h_k訳>

占用(Appropriation)、占用者(Appropriatior)<新保 2012: 8; 飯國 2012: 210>

The term I use to refer to those who arrange for the provision of a CPR is "providers". I use the term "producer" to refer to anyone who actually constructs, repairs, or take actions that ensure the long-term sustenance of the resource system itself. Frequently providers and producers are the same individuals, but they do not have to be (V. Ostrom, Tiebout, and Warren 1961). (p. 31)

>>

CPRの提供[= CPRを利用可能な状態にすること]を手配する人々を指すために私が使う術語は「提供者」である。誰であれ実際に資源システムそのものを建造したり修繕したり、あるいは資源システムそのものの長期的な維持を確実なものにする行為をする人を指すためには、私は「生産者」という術語を用いる。しばしば提供者と生産者は同じ個人であるが、同じでなくともよい(V. Ostrom, Tiebout, and Warren 1961)。<h_k訳>

資源系提供者(Provider)、資源系設置・管理者(Producer)<新保 2012: 8; 飯國 2012: 210>

供給(Provide)、しばしば「労務供給」 <高村 2012: 13>

[h_kコメント:providerが実際に労務を供給するなら、providerとproducerとの区別が意味をなくす。そしてE. Ostrom (1990)はこの区別を意味あるものとみなしているはずである。]

the resource units are not jointly used, but the resource system is subject to joint use. (p. 31)

>>

資源ユニットは合同で利用されることはないが、資源システムは合同利用の対象となる。<h_k訳>

Rational appropriators in complex and uncertain situations

[2.1.2] 複雑で不確実な状況における合理的な占有者

INTERDEPENDENCE, INDEPENDENT ACTION, AND

COLLECTIVE ACTION

[2.2] 相互依存、独立的行為、集合行為

The theory of the firm

[2.2.1] 企業についての理論

The theory of the state

[2.2.2] 国家についての理論

THREE PUZZLES: SUPPLY, COMMITMENT, AND

MONITORING

[2.3] 3つの難問:[制度]供給、コミットメント、監視

The problem of supply

[2.3.1] [制度]供給の問題

The problem of credible commitment

[2.3.2] 信用できるコミットメントの問題

The problem of mutual monitoring

[2.3.3] 相互監視の問題

Without monitoring, there can be no credible commitment; without credible commitment, there is no reason to propose new rules. (p. 45)

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監視がなければ、信用できるコミットメントはありえない。信用できるコミットメントがなければ、新しいルールを提案する理由はない。<h_k訳>

FRAMING INQUIRY

[2.4] 探求の構想/枠組み

Appropriation and provision problems

[2.4.1] 占有問題と提供問題

Multiple levels of analysis

[2.4.2] 複数の分析レベル

"Institutions" can be defined as the sets of working rules that are used to determine who is eligible to make decisions in some arena, what actions are allowed or constrained, what aggregation rules will be used, what procedures must be followed, what information must or must not be provided, and what payoffs will be assigned to individuals dependent on their actions (E. Ostrom 1986a). All rules contain prescriptions that forbid, permit, or require some action or outcome. Working rules are those actually used, monitored, and enforced when individuals make choices about the action they will take (Commons 1957). (p. 51)

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「制度」は、ある場において意思決定する資格があるのは誰か、どの行為が許容され抑制されるのか、どのような集計ルールが用いられることになるのか、どのような手続きに従わなければならないか、どの情報が提供されねばならず、または提供されてはならないか、そしてどのような利得が個々人に対して各人の行為に依拠したかたちで割り振られるのかを決めるために用いられる、実効的ルールの組み合わせとして定義される(E. Ostrom 1986a)。あらゆるルールは、なんらかの行為または結果を禁止したり許可したり要求したりする規定を含んでいる。実効的ルールとは、自身がすることになる行為について個々人が選択しているときに、実際に用いられ監視され執行されているルールのことである(Commons 1957)。<h_k訳>

「制度」とは、一定の分野において誰が決定をなし得るのか、どんな行為が許され、そして制限されるのか、どんな集計方法が用いられるのか、どんな手続きに従わなければならないのか、どんな情報が供給されなければならないか、または供給されてはならないか、そして諸個人の行為に対応するかたちでどんな利得が諸個人に割り当てられるのか、といった点について決定するために用いられる一連の有効な規則、として定義される。<小野 2001: 92>

It is useful to distinguish three levels of rules that cumulatively affect the actions taken and outcomes obtained in using CPRs (Kiser and E. Ostrom 1982). Operational rules directly affect the day-to-day decisions made by appropriators concerning when, where, and how withdraw resource units, who should monitor the actions of others and how, what information must be exchanged or withheld, and what rewards or sanctions will be assigned to different combinations of actions and outcomes. Collective-choice rules indirectly affect operational choices. These are the rules that are used by appropriators, their officials, or external authorities in making policies—the operational rules—about how a CPR should be managed. Constitutional-choice rules affect operational activities and results through their effects in determining who is eligible and determining the specific rules to be used in crafting the set of collective-choice rules that in turn affect the set of operational rules. (p. 52)

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CPRsを利用するなかでとられる行為や得られる帰結に累積的に影響するルールの3つのレベルを区別しておくのが有用である(Kiser and E. Ostrom 1990)。運用ルールは、いつどこでどのように資源ユニットを取り出すか、誰が他の人々を監視するべきか、どの情報がどのように交換されなければならず、また隠されなければならないか、そして、行為と帰結の様々な組み合わせに対してどのような報酬あるいは制裁が割り振られることになるかに関わって、占有者らによってなされる日々の決定に直接的に影響する。集合選択ルールは、こうした運用上の選択には間接的に影響する。これら[集合選択ルール]は、どのようにCPRは管理されるべきかについての政策つまり運用ルールを決めるなかで占有者らやその役員たち、また外部の当局によって用いられるルールである。立憲的選択ルールは、資格があるのは誰かを決めるなかでの、そして、運用ルールの組み合わせに影響を与えることになる集合選択ルールの組み合わせを策定するなかで用いられる特殊なルールを決めるなかでの、その影響を通じて、運用上の行為や結果に影響する。<h_k訳>

「制度設立に関するルール(Constitutional Rule)」、「制度で決定されたルール(Collective Choice Rule)」、「直接作用するルール(Operational Rule)」<高村 2012: 41> [h_kコメント:E. Ostrom (1990)にとって、constitutional rulesも、またoperational rulesなら尚更のこと、制度のなかで決定されている(「制度で決定された」)ルールのはずであるし、constitutional rulesもcollective-choice rulesもまた、operational rulesが個々人の資源への直接的な働きかけ、つまり占有や供給などの意思決定に直接作用するのと同様に、それぞれのレベルでの意思決定に対して「直接作用するルール」のはずであり、これらは高村(2012)独自の視点からの訳語であろう。]

The processes of appropriation, provision, monitoring, and enforcement occur at the operational level. The processes of policy-making, management, and adjudication of policy decisions occur at the collective-choice level. Formulation, governance, adjudication, and modification of constitutional decisions occur at the constitutional level. (p. 52)

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占有、提供、監視、執行の諸過程は運用レベルで生じる。政策立案、管理そして政策決定の裁決の諸過程は集合選択レベルで生じる。立憲的決定の案出、運営、裁決、修正の諸過程は立憲レベルで生じる。<h_k訳>

STUDYING INSTITUTIONS IN FIELD SETTINGS

[2.5] フィールド状況における制度の研究

3

Analyzing long-enduring, self-organized, and

self-governed CPRs

長期耐久的で自己組織型・自己統治型のCPRsの分析

COMMUNAL TENURE IN HIGH MOUNTAIN MEADOWS

AND FORESTS

[3.1] 高山の牧草地と森林における共同体的保有

Törbel, Switzerland

[3.1.1] スイスのテーベル

Hirano, Nagaike, and Yamanoka villages in Japan

[3.1.2] 日本の平野村、長池村、山中村

YamanokaYamanakaの誤記か)

HUERTA IRRIGATION INSTITUTIONS

[3.2] ウェルタ灌漑(かんがい)制度

Valencia

[3.2.1] バレンシア

Murcia and Orihuela

[3.2.2] ムルシアとオリウェラ

Alicante

[3.2.3] アリカンテ

ZANJERA IRRIGATION COMMUNITIES

IN THE PHILIPPINES

[3.3] フィリピンにおけるサンヘラ灌漑(かんがい)共同体

SIMILARITIES AMONG ENDURING, SELF-GOVERNING

CPR INSTITUTIONS

[3.4] 耐久的で自治的なCPR制度のあいだの類似点

By "design principle" I mean an essential element or condition that helps to account for the success of these institutions in sustaining the CPRs and gaining the compliance of generation after generation of appropriators to the rules in use. This list of design principles is still quite speculative. I am not yet willing to argue that these design principles are necessary conditions for achieving institutional robustness in CPR settings. (p. 90)

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「設計原則」によって私が意味するのは、CPRsを維持することにおいて、そして用いられているルールの遵守を占有者たちの各世代から獲得していることにおいて、これらの制度が成功していることを説明するのに役立つ不可欠の要素ないし条件のことである。この設計原則のリストは依然きわめて推測的なものである。私は、これら設計原則がCPR状況における制度的頑健性を達成することの必要条件だと主張するつもりはない。<h_k訳>

設計原則ほか参考になる図表などについては、Box, Figure, & Tabels(ただし英語)を参照.

Clearly defined boundaries

[3.4.1] 明確に定義された境界

1 Individuals or households who have rights to withdraw resource units from the CPR must be clearly defined, as must the boundaries of the CPR itself. (p. 91)

>>

1 CPRから資源ユニットを取り出す権利をもつ個人あるいは世帯というものが明確に定義されていなければならず、CPRそれ自体の境界もまたそうされていなければならない。<h_k訳>

Congruence between appropriation and provision rules and

local conditions

[3.4.2] 占有ルールと提供ルールおよび地域条件との適合

2 Appropriation rules restricting time, place, technology, and/or quantity of resource unites are related to local conditions and to provision rules requiring labor, materials, and/or money. (p. 92)

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2 時期、場所、技術および/または資源ユニットの量を制限する占有ルールは、地域条件にも、労働、資材および/または貨幣を要求する提供ルールにも関連づけられている。<h_k訳>

Collective-choice arrangements

[3.4.3] 集合選択の取り決め

3 Most individuals affected by the operational rules can participate in modifying the operational rules. (p. 93)

>>

3 運用ルールによる影響を受ける、ほとんどの個人が、運用ルールの修正に参加できる。<h_k訳>

Monitoring

[3.4.4] 監視

4 Monitors, who actively audit CPR conditions and appropriator behavior, are accountable to the appropriators or are the appropriators. (p. 94)

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4 監視人は、活発にCPRの状態や占有者の行動を検査するものであり、占有者らに対して説明責任を負うか、自身もまた占有者である。<h_k訳>

Graduated sanctions

[3.4.5] 段階的な制裁

5 Appropriators who violate operational rules are likely to be assessed graduated sanctions (depending on the seriousness and context of the offense) by other appropriators, by the officials accountable to these appropriators, or by both. (p. 94)

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5 運用ルールを破った占有者はたいてい、ほかの占有者によって、あるいはこれら占有者に説明責任を負う役職員によって、あるいはその両方によって、(違反の深刻さや背景事情に依拠して)段階的な制裁を課されるようになっている。<h_k訳>

When CPR appropriators design their own operational rules (design principle 3) to be enforced by individuals who are local appropriators or are accountable to them (design principle 4), using graduated sanctions (design principle 5) that design who has rights to withdraw units from the CPR (design principle 1) and that effectively restrict appropriation activities, given local conditions (design principle 2), the commitment and monitoring problem are solved in an interrelated manner. (p. 99)

>>

CPR占有者らが、誰がCPRから[資源]ユニットを取り出す権利を持つのかを定義する(設計原則1)とともに地域条件を所与として占有行為を効果的に制限する(設計原則2)ような、自分たち独自の運用ルールを設計して(設計原則3)、それらルールが地元の占有者らである個人ら、あるいは彼らに説明責任を負う個人らによって執行され(設計原則4)、その際に段階的な制裁を用いている(設計原則5)とき、コミットメント問題と監視問題は、相関的な仕方で解決される。<h_k訳>

Conflict-resolution mechanisms

[3.4.6] 紛争解決の仕組み

6 Appropriators and their officials have rapid access to low cost local arenas to resolve conflicts among appropriators or between appropriators and officials. (p. 100)

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6 占有者とその役職員は、占有者のあいだの、あるいは占有者と役職員との間の紛争を解決するための、低費用での地元の話し合いの場をすぐに持つことができる。<h_k訳>

Minimal recognition of rights to organize

[3.4.7] 組織化する権利の最低限の承認

7 The rights of appropriators to devise their own institutions are not challenged by external governmental authorities. (p. 101)

>>

7 占有者らが自分たち独自の制度を考案する権利が、地域外の政府当局によって無効とされない。<h_k訳>

Nested enterprises

[3.4.8] 入れ子状の諸事業

8 Appropriation, provision, monitoring, enforcement, conflict resolution, and governance activities are organized in multiple layers of nested enterprises. (p. 101)

>>

8 占有、提供、監視、紛争解決および運営の諸行為は、入れ子状の諸事業の複数の層[の各層]において組織化されている。<h_k訳>

4

Analyzing institutional change

制度変化の分析

THE COMPETITIVE PUMPING RACE

[4.1] 激しい[地下水]汲み上げ競争

The setting

[4.1.1] 状況

The logic of the water-rights game

[4.1.2] 水利権ゲームの論理

THE LITIGATION GAME

[4.2] 訴訟ゲーム

The Raymond Basin negotiation

[4.2.1] レイモンド水系の交渉

The West Basin negotiation

[4.2.2] ウェスト水系の交渉

The Central Basin negotiation

[4.2.3] セントラル水系の交渉

Conformance of parties to negotiated settlements

[4.2.4] 交渉による妥結に向けた当事者らの一致

THE ENTREPRENEURSHIP GAME

[4.3] 起業[組織創設]ゲーム

Reasons for forming a district to include both basins

[4.3.1] 両水系を含む特別区を形成することへの賛成理由

Reasons against forming a district to include both basins

[4.3.2] 両水系を含む特別区を形成することへの反対理由

THE POLYCENTRIC PUBLIC-ENTERPRISE GAME

[4.4] 多中心的な公営事業ゲーム

THE ANALYSIS OF INSTITUTIONAL SUPPLY

[4.5] 制度供給の分析

Incremental, sequential, and self-transforming institutional

change in a facilitative political regime

[4.5.1] 助成的な政治体制における、漸進的で順次的な自己変形的制度変化

Reformulating the analysis of institutional change

[4.5.2] 制度変化の分析の再定式化

5

Analyzing institutional failures and fragilities

制度的失敗と制度的脆弱性の分析

TWO TURKISH INSHORE FISHERIES WITH CONTINUING

CPR PROBLEMS

[5.1] CPR問題が継続しているトルコの2つの沿岸漁場

CALIFORNIA GROUNDWATER BASINS WITH CONTINUING

CPR PROBLEMS

[5.2] CPR問題が継続しているカリフォルニアの地下水水系

A SRI LANKAN FISHERY

[5.3] スリランカの或る漁場

IRRIGATION DEVELOPMENT PROJECTS IN SRI LANKA

[5.4] スリランカにおける灌漑(かんがい)開発プロジェクト

FRAGILITY OF NOVA SCOTIAN INSHORE FISHERIES

[5.5] ノバスコシア沿岸漁場の脆弱性

LESSONS TO BE LEARNED FROM COMPARING THE CASES

IN THIS STUDY

[5.6] 本研究における諸事例の比較から学ばれるべき教訓

6

A framework for analysis of self-organizing and

self-governing CPRs

自己組織的で自己統治的なCPRsの分析のための枠組み/フレームワーク

This study has an additional purpose beyond challenging the presumption that universal institutional panaceas must be imposed by external authorities to solve smaller-scale, but still complex, uncertain, and difficult, problems. The observation that the world is more complex that it is presented in these models is obvious, and not useful by itself. What is needed is further theoretical development that can help identify variables that must be included in any effort to explain and predict when appropriators using smaller-scale CPRs are more likely to self-organize and effectively govern their own CPRs, and when they are more likely to fail. (p. 183)

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この研究は、より小規模だがやはり複雑で不確実で、そして困難な問題を解決するためには、外在的な当局によって普遍的な制度的万能薬が押しつけられなければならないという想定に異議を唱えることを越えた、追加的な目的を持っている。これらのモデルによって示されているよりも世界は複雑なのだという観察は明白なことであり、それ自体では有用ではない。必要なことは、どのようなときのほうがより小規模なCPRsを利用する占有者らが自己組織化し自分たちのCPRsを効果的に運営する傾向にあるのか、そして、どのようなときのほうが彼らは失敗する傾向にあるのかを説明し予見するためのいかなる試みにおいても含まれなければならない諸変数を同定するのに役立つことのできる更なる理論的発展である。<h_k訳>

この研究は、小規模だが複雑で、不確実で、困難な問題を解決するためには、外的な権威によって普遍的な制度的万能薬が与えられなければならない、という仮定を超えた、付加的な目標を持っている。これらのモデルによって示されているよりも、世界はより複雑だという観察は明白であるが、それ自体は余り有益ではない。必要なことは、小規模な共有資源を利用する人々が、自己組織化し自分たちの共有資源を効果的に管理できるのはどのような場合で、どのような場合にはそれに失敗しがちなのか、といった点について説明し、予見するためのどんな努力の内にも含まれなければならない諸変数を特定するために役立ち得るような、更なる理論的展開である。<小野 2001: 94>

The models described in Chapter 1 are not wrong. When conditions in the world approximate the conditions assumed in the models, observed behaviors and outcomes can be expected to approximate predicted behaviors and outcomes. When individuals who have high discount rates and little mutual trust act independently, without the capacity to communicate, to enter into binding agreements, and to arrange for monitoring and enforcing mechanisms, they are not likely to choose jointly beneficial strategies unless such strategies happen to be their dominant strategies. …

Instead of being wrong, these are special models that utilize extreme assumptions rather than general theories. These models can successfully predict strategies and outcomes in fixed situations approximating the initial conditions of the models, but they cannot predict outcomes outside that range. They are useful for predicting behaviors in large-scale CPRs in which no one communicates, everyone acts independently, no attention is paid to the effects of one's action, and the costs of trying to change the structure of the situation are high. They are far less useful for characterizing the behavior of appropriators in the smaller-scale CPRs that are focus of this inquiry. (p. 183)

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第1章で述べられた諸モデルは誤ってはいない。[この]世界における諸条件が、モデルにおいて仮定されている諸条件と近似しているときには、[この世界において]観察される行動および結果は、[モデルから]予見される行動および結果に近似することが期待されうる。高い割引率を持ち相互の信用をほとんど有さない諸個人が、コミュニケーションして拘束的な合意に加わり、そして監視と執行の仕組みを用意するという能力もなしに、独立的に行為するときには、有益な戦略がたまたま支配戦略になっていなければ、彼らはそういった戦略を合同で選択しそうにはない。(中略)

誤っているのではなく、これら[のモデル]は一般理論というよりも、極端な諸仮定を利用している特殊なモデルなのである。これらのモデルは、そのモデルの初期条件に近似している固定的状況においては、戦略および帰結を成功裡に予見することができるのだが、そういった射程外の帰結を予見することはできない。それら[のモデル]は、誰もコミュニケーションせず、全員が独立的に行動し、各自の行為の影響には注意が払われず、そして、その状況の構造を変化させようとすることの費用が高いような大規模CPRsにおける行動を予見するのには有用である。[しかし]この探求の焦点である、より小規模なCPRsにおける占有者たちの行動を特徴づけるのには、有用というにはほど遠い。<h_k訳>

第1章で紹介した諸モデルは、誤りというわけではない。現実における諸条件が、モデルで仮定されている諸条件と近似しているときには、観察された行為と結果とは、予見された行為と結果とに近似することが期待できる。(未来への)高い割引率を持ち、相互信頼をほとんど有さない諸個人が、意思疎通の可能性なしに、拘束的合意へと参加し、監視と強制のメカニズムの設立へ向け行為するときには、それらの人々はお互いに便益をもたらすような戦略を選択することはないであろう、それが偶然にも彼らの優越戦略とならなければ。(中略)

これらのモデルは、誤りなのではなく、一般理論と言うよりむしろ極端な仮定を利用した特殊なモデルなのである。これらのモデルは、モデルの初期条件に近似した固定的状況においては、戦略や結果を成功裡に予見することができる。しかしこの範囲外の結果を予見することはできない。それらのモデルは、誰も意思疎通せず、皆が独自に行動し、他人の行為の影響に注意を払わず、その状況の構造を変化させようと試みることのコストが高いような条件下での大規模な共有資源における行動を予見する際には有用である。しかし本書で検討したような、より小規模の共有資源の利用者たちの行動を特徴づける際には、有用というにはほど遠い。<小野 2001: 94-5>

THE PROBLEMS OF SUPPLY, CREDIBLE COMMITMENT,

AND MUTUAL MONITORING

[6.1] [制度]供給、信用できるコミットメント、相互監視という問題

What is needed in the development of useful theory for the analysis of CPR situations—as well as many other important policy questions—is a somewhat different orientation toward the theoretical endeavor related to policy analysis. Clear analytical models provide an important part of the theoretical foundation for good policy analysis, but not the entire foundation. To get clear results from a model, some variables are omitted or consciously or unconsciously held constant. Models suggest to the analyst likely behaviors and outcomes in a situation with a particular structure. They do not tell the analyst how to discover the structure of the situation in order to conduct an analysis. (p. 191)

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他の多くの重要な政策問題についても同様だが、CPR状況の分析のための有用な理論の発展において求められているのは、政策分析に関連する理論的な努力に対する、やや異なった方向性である。明解な分析的モデルは優れた政策分析のための理論的基礎を提供するが、基礎全体を提供するわけではない。あるモデルから明解な結果を得るには、いくつかの変数は省略されるか、意識的にか無意識的にか定数にとどめられる。モデルは分析者に対して、特定の構造を伴う状況において生じそうな行動および帰結を示唆するものである。それら[モデル]は分析者に、[現実世界で]分析を進めるために、どのようにして[現実世界における]状況の構造を見つけるのかを教えてくれるわけではない。<h_k訳>

共有資源の状況の分析にとって——そして他の多くの政策課題の分析にとっても——有益な理論の発展のために必要なことは、政策分析へと関連づけられた理論的努力へのやや異なった志向性である。明確な分析的モデルは、優れた政策分析のための理論的基礎にとって重要な部分を供給しているが、基礎全体を供給しているわけではない。あるモデルから明確な結果を得るためには、いくつかの変数は無視されるか、意識的ないし無意識的に定数と見なされる。モデルは分析者に対し、特定の構造を伴った状況でのあり得る行為と結果について示唆する。モデルは分析者に対し、分析を行うためにどのようにして状況の構造を発見するか、という点については語らない。<小野 2001: 96>

A FRAMEWORK FOR ANALYZING INSTITUTIONAL

CHOICE

[6.2] 制度選択の分析のための枠組み/フレームワーク

Evaluating benefits

[6.2.1] 便益の評価

Evaluating costs

[6.2.2] 費用の評価

Evaluating shred norms and other opportunities

[6.2.3] 共有されている規範と他の機会の評価

The process of institutional change

[6.2.4] 制度変化の過程

Predicting institutional change

[6.2.5] 制度変化の予想

A CHALLENGE TO SCHOLARSHIP IN THE SOCIAL

SCIENCES

[6.3] 社会諸科学における研究にとっての課題

Notes

1. REFLECTIONS ON THE COMMONS

2. AN INSTITUTIONAL APPROACH TO THE STUDY OF

SELF-ORGANIZATION AND SELF-GOVERNANCE IN CPR

SITUATIONS

23 Ciriacy-Wantrup and Bishop (1975) carefully distinguished between an open-access CPR, in which no one has any property rights, and a closed-access CPR, in which a well-defined group owns property in common. "Common-property resources" is a term that is still used inappropriately in many instances to refer to both open-access and closed-access CPRs. (p. 222)

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原注23)Ciriacy-Wantrup and Bishop (1975)は、オープンアクセス[=参入自由]CPRつまり、そこでは誰もいかなる財産権も有することがないものと、 クローズドアクセス[=限定参入]CPRつまり、そこでは適切に定義された集団が共同で財産[権]を有するものとの間を注意深く区別している。「共有資源」は、依然として多くの場合において、オープンアクセスCPRとクローズドアクセスCPRとの両方を指示するように不適切に用いられる術語である。<h_k訳>

3. ANALYZING LONG-ENDURING, SELF-ORGANIZED, AND

SELF-GOVERNED CPRs

3 I had hoped to include an analysis of the persistence of "common lands" in feudal and medieval England. The famous "enclosure acts" of British history have been presented in many history books as the rational elimination of an obviously inefficient institution that had been retained because of an unthinking attachment to the past for an overly long time. Recent economic historians, however, have provided an entirely different picture of English land-tenure systems before the enclosure acts and even of the process of gaining enclosure itself (Dahlman 1980; Fanoaltea 1988; McCloskey 1976; Thirsk 1959, 1967). Many of the manorial institutions share broad similarity with the long-enduring institutions described in this chapter: a clear-cut definition of who is authorized to use common resources; definite limits (stinting) on the uses that can be made; low-cost enforcement mechanisms; local rule-making arenas to change institutions over time in response to environment as economic changes. Common-field property institutions were transported to New England, where they flourished for close to 100 years, until exclusion costs became low enough and/or transaction costs rose to produce a slow evolution from larger to smaller commons, eventuating in private tenure (B. Field 1985a,b). Even the presumed increased efficiency of enclosure has come into question. R. C. Allen (1982) concludes, for example. that the eighteenth-century enclosures of open fields redistributed the existing agricultural income, rather than expanding total income through enhanced efficiency (Yelling 1977). (p. 224)

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原注3)私は封建時代・中世のイングランドにおける「共同地」の存続についての分析を含めたいと思っていた。英国史の有名な「囲い込み諸法」は多くの歴史書において、過去への無思慮な愛着のためにあまりにも長い間とどめおかれていた明らかに非効率な制度の合理的な消去として提示されてきた。しかしながら、近年の経済史家たちは、囲い込み諸法より前のイングランドの土地保有権の体系について、そして、囲い込みそのものを進めて行く過程についてさえも、まったく異なった描写を提供してきた(Dahlman 1980; Fanoaltea 1988; McCloskey 1976; Thirsk 1959, 1967)。荘園的な諸制度の多くは本章で記述された長期耐久的な諸制度と広範な類似点を共有している。つまり、誰が共同資源を利用する権限を付与されているかのはっきりした定義、可能な利用に対する明確な限度(スティント[=制限]を課している)、低費用の執行の仕組み、環境や経済的変化に応じて長い時間のなかで制度を変化させるための、地元のルール作成の場である。共同耕地所有制度はニューイングランドへ移され、そこでは、排除費用が十分低くなり、かつ/あるいは取引費用が上昇するなかで最後には私的保有権に至る、より大きなコモンズからより小さなコモンズへの緩やかな進化を生み出すまで、百年近くの間、広く行き渡っていた(B. Field 1985a,b)。囲い込みによって増大すると想定されていた効率性さえ疑問とされている。例えば、R. C. Allen (1982) は、開放耕地の18世紀の囲い込みは、高められた効率性を通じて全体の収入を拡大させたというよりも、従来の農業収入を再分配した[だけ]と結論付けている(Yelling 1977)。<h_k訳>

4. ANALYZING INSTITUTIONAL CHANGE

47 All rules share a common syntax: Defined persons with particular attributes filling specific positions are (required, forbidden, or permitted) to take named actions under specified conditions. (p. 237)

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原注47)すべてのルールはある共通の構文を共有している。つまり、特別な地位を占め特有の属性をもつ特定の人物は、特定化された条件下で、指定された行為をとることを(要求、禁止あるいは容認)される、というものである。<h_k訳>

5. ANALYZING INSTITUTIONAL FAILURES AND FRAGILITIES

6. A FRAMEWORK FOR ANALYSIS OF SELF-ORGANIZING AND

SELF-GOVERNING CPRs

20 … We do not claim to have developed a universal model of inshore fishery environment, nor do we claim to have explored all relevant rule configurations. Because we are developing models guided by a general framework, we recognize the part of the general terrain to which our models are relevant. Within that terrain, we are able to make precise predictions about equilibria and the logical relationships among the variables overtly included in the model. (p. 244)

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我々は沿岸漁場環境の普遍的なモデルを発展させたのだとは主張していないし、すべての関連するルール構成を調べ上げたと主張してもいない。我々は一般的な枠組み/フレームワークによって誘導されるモデルを展開している最中なのだから、我々は自分たちのモデルが関連するような、一般的な領域のなかの部分[一般的な領域のなかのどの部分に自分たちのモデルが関連するのか]について認識している。その領域のなかでは、我々は諸均衡と、モデルのなかに明示的に含まれている諸変数のあいだの論理的関係性については正確な予見をすることができる。<h_k訳>

我々は、沿岸漁業の環境についての一般的モデルを展開してきた、と主張するのでもないし、関連するすべてのルール配置状況について研究してきたと主張するのでもない。我々は、一般的枠組みによって導かれたモデルを展開しているので、我々のモデルが有効であるのは一般的領域の一部であることを自覚している。この領域内では、我々は均衡について、そしてそのモデルに明確に含まれる諸変数間の論理的関係についても、正確に予見することができる。<小野耕二 2001: 88>

References

参考文献

Index

索引

書名について:

"governing"を「運営する」と訳すことに違和感を覚えるひとも少なくないことは承知しているつもりである。

代替案としては、まず、governing即ちgovernanceと考えて「コモンズのガバナンス」と訳すということも可能であろう。実際、現在「ガバナンス」は日本においてもキーワードあるいはバズワードになっている。しかし、本書を読むかぎり、著者自身の「ガバナンス」という語彙へのこだわりを読みとれなかったので、この案は採用しなかった。

他方、「統治」と訳すことも可能であるが、日本語で「統治」という言葉は、官僚集団を擁する国家や公式の政府による、しばしば上からの/一方的な政治的営為という意味とかなり強く結びついている。何に対するものであれ「私たちは統治に参加している」と実感することのある読者は少ないのではないか。本書が扱っているのは、一般的な人々による身近な、どちらかと言えば下からの営為である。。

「運営」であれば、多くの読者にとって「統治」よりも身近に感じられるであろう。本書で取り上げられる事例の当事者たちも、日々の身近な出来事として、コモンズに関する事柄をgovernしてきた/いるはずである。

また「管理」はmanagementを連想させるし、またManaging the Commonsと題する編書がすでにあるので避けた。

関連ノート

日本語使用者向けノート一覧

"Common(-)Pool Resource(s)"をどう訳すか

文献案内

<一次文献:議論の始まり>

- Hardin, Garrett. 1968 "The Tragedy of the Commons," Science 162: 1243-1248.(桜井徹訳 1993「共有地の悲劇」シュレーダー=フレチェット編/京都生命倫理研究会訳『環境の倫理 下』晃洋書房: 445-470.)

- Olson, Mancur. 1965/1971 The Logic of Collective Action; Public Goods and the Theory of Groups. Cambridge, MA; Harvard University Press. (依田博、森脇俊雅訳 1983『集合行為論—公共財と集団理論―』ミネルヴァ書房)

<その他>

- 飯國芳明(2013)「コモンズの類型と現代的課題」[第10章]、新保輝幸、松本充郎編著『変容するコモンズ——フィールドと理論のはざまから——』ナカニシヤ出版、203-221頁.

- 森脇俊雅(2000)『集団・組織』[社会科学の理論とモデル シリーズ 6] 東京大学出版会

- 小野耕二(2001)『比較政治』[社会科学の理論とモデル シリーズ 11] 東京大学出版会.

- 新保輝幸(2012)「フィールドからコモンズを考える」[序章]、新保輝幸、松本充郎編著『変容するコモンズ——フィールドと理論のはざまから——』ナカニシヤ出版、7-17頁.

- 高村学人(2012)『コモンズからの都市再生——地域共同管理と法の新たな役割——』ミネルヴァ書房.

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