2025年4月27日日曜日

【神動画】モズラーと読み解くMMT(2025年1月18日)パート1/3|🦉ゲーテちゃん🦉

【神動画】モズラーと読み解くMMT(2025年1月18日)パート1/3|🦉ゲーテちゃん🦉

Unraveling the Mysteries of Modern Monetary Theory with Warren Mosler https://youtu.be/C9DJEG4qWKk?si=pFsGvTbGiF4dpmMr @YouTubeより
2022/01/18

https://note.com/goetche_chan/n/nc2c320f29b9e

【神動画】モズラーと読み解くMMT(2025年1月18日)パート1/3

見出し画像

(編集後記:やっぱ90分動画を3分割って長すぎたのでパート2からは5分割にしたよ!→パート2/5

1月18日に投稿された、MMTの父ウォーレン・モズラー出演の動画。MMTのコアな考えというか、モズラーの考えを理解するのに絶好の「神動画」だったので、以下の通り分割して紹介したい。(英語で実際の動画を見たい人はこちら。見出しや太字、画像などは訳者が付したもの。)


「ウォーレン・モズラーと読み解くMMTの謎(Unraveling the Mysteries of Modern Monetary Theory with Warren Mosler)」(2025年1月18日)

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[00:00:00]〜[00:01:08] (省略)

冒頭部分

[00:01:08]

アダム・バトラー(MC):
皆さんようこそ!今日はモダン・マネタリー・セオリー(MMT)の創始者として広く知られる経済学者であり、金融の専門家でもあるウォーレン・モズラーをお迎えしています。
彼は1982年にイリノイ・インカム・インベスターズという投資会社を設立し、1997年まで債券運用で世界トップクラスの実績を残しました。
モズラー氏はその豊富な市場経験をもとに1990年代初頭にMMTを発展させ、現代の通貨制度がどう機能しているのかを根底から見直しました。
現在は米領ヴァージン諸島セントクロイ島に在住し、Valence Company Inc.を経営。経済政策の議論に今なお影響を与え続けています。
モズラー氏は「十分な政府支出で対処できないほど深刻な金融危機は存在しない」とする「モズラーの法則」でも知られており、代表的な著書『経済政策における命取りに無邪気な七つの嘘』は多言語に翻訳され、スイスのフランクリン大学から名誉博士号を授与されています。
ウォーレン、本日は出演してくれて本当にありがとう!

ウォーレン・モズラー:
こちらこそ、紹介ありがとう。

アダム・バトラー:
実はね、番組に出てほしいと思ったきっかけは、ケイマンでPJピエール(MMT派の金融トレーダー。Xアカウント:@TatianaPierre)と会ったときなんだ。イベントで一緒に座っていて、「PJはモズラーのもとで学んでたんだ」って聞いて、「そりゃ聞かにゃ!」って感じで、質問攻めにしたんだ(笑)それが縁で、今回の企画が実現したってわけ。

ウォーレン・モズラー:
なるほど、それはいいきっかけだったね。

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左からアダム・バトラー、ウォーレン・モズラー(音質改善して…)、リチャード・レーターマン

MMTは何が違うのか?変動相場という新世界

[00:02:42]
アダム・バトラー:
今日はリチャード・レーターマンも来てるよ。彼は僕らReSolveのポートフォリオマネージャーで、政策とか経済に洞察があるゲストが来るときはよく参加してくれるんだ。
それじゃ本題に入ろう。ウォーレン、MMTについてまだあまり馴染みがない人のために、「モダン・マネタリー・セオリーって何なのか」、そして「どうしてそれが従来の経済学と違うのか」ってところを、まず教えてくれるかな?

ウォーレン・モズラー:
ああ、もちろん。
私がずっと感じてるのはね、今でも多くの古典派経済学って、実は固定為替相場を前提にしてるってことなんだ。
でも現実は、ほとんどの国が変動為替相場に移ってるだろ?
だから、昔の理論をそのまま当てはめようとしても無理があるってわけ。
たとえば、君らも為替取引したことあるだろ?

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ライオンがカッコいい100香港ドル紙幣(引用元

香港ドル(HKD)って、米ドルとペッグされてて(ほぼ)固定相場なんだよね。で、大量に先物(フォワード)を売ると、スポット・レート(現時点の為替レート)は(ドルペッグ政策で)固定されてるけど、フォワード価格は下がる。
その下がり方って、実質的に90日金利と同じになるんだよ。つまり金利を押し上げてるようなものなんだ。

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1ドル=7.75香港ドル〜7.85香港ドルのレンジを推移(引用元

で、昔のファンドはこういうことやってたんだよ――
まず香港株をショート(空売り)する。次に(さっき説明したように)香港ドルをフォワードで売って金利を押し上げる。そうして市場をビビらせて株価を下げる。 その後で株のショートを買い戻して儲ける。 うまくいけば、為替の方でも収益が出るって寸法さ。
これがうまく機能してたのは、「金利と為替が連動して動いてたから」なんだよね。

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2020年に例の件(意味深)で投資家がフォワード売りを仕掛けたことも(引用元

でもね、同じことを日本円(JPY)でやっても通用しない。
円は対ドルでも変動相場だから、フォワードで売っても円安にはなるけど、金利はゼロに張り付いたまんま。
つまり、為替が変動制か固定制かで、動き方がまったく違うってことなんだ。
1994年のメキシコ・ペソ危機、1998年のロシア・ルーブル危機、そしてポンドを巻き込んだERM(欧州為替相場メカニズム)の崩壊とかあったと思うけど、変動為替制ではああいう"爆発的な崩壊"って起きないんだよ。つまり、固定相場と変動相場じゃ、まるで別モンなんだよ。
変動相場だと、通貨は普通に上がったり下がったりする。
たとえばユーロが50%下がったこともあったけど、誰も大して気にしてなかった。
オーストラリアドルも同じ。50%下がっても"ふーん"って程度だったよ。
逆に通貨が50%上がっても、新聞の2面か3面にちょろっと載るぐらい。
変動相場っていうのは固定相場とは全く違う世界なんだよ。
で、この違いってのが、私が1990年代の初めに気づいたことだったんだよ。 当時はまだ"Modern Monetary Theory(現代貨幣理論)"なんて名前じゃなかったけどな。 その後、ほとんどの国の通貨が変動相場制になったもんで、 それを土台にした考え方として、"Modern Monetary Theory"って呼ばれるようになったってわけさ。

アダム・バトラー:
そうだったのか。つまり、経済学を考え直す根っこの動機って、そもそも新古典派経済学が「固定為替相場ありき」って前提でできてるから、ってことなんだね?
正直、そこまで深く考えてなかったよ。


「中立金利」は固定相場時代の遺物

ウォーレン・モズラー:
そうなんだよ。みんなあんまり気づかないんだけど、これがけっこう根深いんだよね。
で、たとえば最近よく聞くでしょ?「中立金利(neutral rate)」っていう言葉。
FRBが「今の中立金利はどの辺りか」って必死で探ってるわけだけど、
そもそも「中立金利」って発想自体が、固定相場の時代のエコー(名残り)なんだ。
たとえば香港ドルみたいに固定相場だったら、フォワードレートっていうのは、「香港ドル(HKD)を持ち続けるか、それとも米ドル(USD)に換えるか」って判断の中で、金利を反映するようにマーケットが動いて決めていくんだよね。
で、同じことが金本位制にも言える。
金(ゴールド)と交換できるドルが流通してる時代ね。(訳註:ここで言ってるのは19世紀の金本位制ではなく、1944年からのドルを介した金本位制、「金ドル本位制」の話だと思われる。)
政府が赤字支出を行うと、それはつまり金兌換のドルが市場に増えるってことになる。金兌換のドルを借入れる(債券発行)のはその後さ。
で、ここが大事なとこなんだけど──
なんでわざわざ政府はそんなこと(債券発行)をするかって?
それはね、人々が金の引換券(ゴールド証書)を使って、本当に金(ゴールド)を引き出しに来るのを恐れてるからなんだよ。
つまり、金準備がごっそり減ることを避けたいってわけさ。

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今ゴールドに換えるかは金利次第(画像:生成AI)

で、ここで登場するのが金利(interest rate)ってやつだ。
金に交換できる通貨を持ってる投資家たちにとって、
「このまま通貨を持っておくか?それとも金(ゴールド)に交換しちゃうか?」って判断の分かれ目になるのが金利なんだ。
つまり、この通貨を持ち続けていれば金利がつくって状況なら、
「金に換えるのはちょっとやめとこうか」ってなる。
そしてこの仕組みから自然とイールドカーブ(利回り曲線)が右肩上がり(償還期間が長いほど利回りが高い)になるんだ。

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金(ドル)本位制では左の順イールド(引用元

どういうことかっていうと──
償還期間が長ければ長いほど、金に交換できるまでの"待ち時間"が長くなるわけだよな?
そのぶん、「この間に何かトラブルがあるかもしれない」って不確実性のリスクが高まるんだ。
だから、投資家にとっては"長く待つ=高いオッズ(利回り)じゃないと割に合わない"って話になるわけさ。


1998年のロシアで起きたこと

ウォーレン・モズラー:
たとえば、1998年に起きたロシアのルーブル危機を思い出してほしい。
当時、ルーブルは「1ドル=6.45ルーブル」って固定レートでドルに換えられるってことになってた(これも実質ドルペッグ制)。
でも実際には、"ルーブルを持っててもほんとにドルに換えられるのか?"って不安が出てきたわけさ。
というのも、ルーブルってのは実際の経済の中では、"ドルに換えられる"以外に持つ理由がほとんどなかったんだ。
それくらい"実態以上に高く評価されてた"ってことだな。
で、その不安――つまり"ルーブルを持ち続けるリスク"ってやつが、どんどん上がる金利に反映されていったわけよ。
ロシア政府は、"ルーブルをドルに換えさせないために"GKO(ロシア国債)を大量に発行して金利を釣り上げていった
その金利がどうなったかって?
5%、10%、20%、ついには40%まで跳ね上がったんだ。
で、政府はIMFから数十億ドル借りて、なんとか持ちこたえようとした。
そのとき金利は一時的に20%まで下がったんだ。
でもね、そのIMFの支援が尽きて、打ち切られたとたん、事態は一気に悪化した。
金利は50%、100%へと爆上がりして、しまいには200%にまで上がった。

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1998年のロシア・ルーブル危機(引用元

それでも、誰もルーブルを持ち続けようなんて思わなかった。
みんな"ドルに換える"ことしか考えてなかったんだよ。
面白い話があってね……ロシアの中央銀行、もう完全にお手上げで、職員たちは何もせずに3か月くらい"デスクに座ってただけ"って感じだったんだよ。ほんとに、"電気も消さずに出てった"みたいな状態だった(笑)

アダム・バトラー:
ははは、それはすごい話だな!

ウォーレン・モズラー:
だって、もうどうしたらいいか分からなかったんだと思うよ。
通貨制度をどう変えるのか、どう切り替えたらいいのか、それが分からなかったか、あるいは分かってても、やったら命が危ないって思ったのかもしれない。
まぁ、お国によってはそういう事情もあるからね。
で……ごめん、さっきの質問、何だったっけ?
ちょっと話が脱線しちゃったな(笑)

アダム・バトラー:
いやいや、全然OK。
もともと聞いてたのは、「MMTってどんな考え方で始まったのか」ってところで、その核心に"固定相場と変動相場の違い"があるってことが、すごく面白かったんだ。


オバマも日和った。「スペンディング・ファースト」の話

[00:09:37]

リチャード・レーターマン:
そしたらこの話を、もうちょっと深掘りしていこうか。
MMTが古典派経済学とどう違うのかっていう話の中で、
たとえば「オペレーションの順序」ってのがあるよね。
ステファニー・ケルトンの本では、これをS (TAB)(支出→(徴税+借入))と(TAB) S((徴税+借入)→支出)って呼んでるけど、つまり「政府は徴税や借入よりも先に支出する」っていう考え方。
これをもう少し掘り下げていけたらと思うんだ。

ウォーレン・モズラー:
よし、じゃあ最初から話そうか。
税を支払うためのドルってのは、そもそもアメリカ政府から出て来るんだよ。
でもね、それって経済学のモデルの中には入ってないんだ。
経済学じゃ「G−T(政府支出−税収)」って式を使って、「税を回収してから支出する」ってなってるけど、因果関係の順番が逆なんだ。
式そのものはいいんだけど、大事なのはG(政府支出)が先だってこと。
ドルがなければ、そもそも税なんて払えないだろ?
国債についてはどうかというと、確かにFRBの誰に聞いてもこう言うよ、「準備金を追加するには、事前に準備金の排出がないといけない」ってね。でもその意味するところは、彼らの仕事は、日々のオペレーション要因を相殺することで、たとえば、国債の決済時にフェッドファンド金利(政策金利)が上がって、「準備金が足りてない」って兆候が出たら、FRBはレポ(再購入)を使って準備金を追加する。
最近はQE(量的緩和)で、事前に大量の準備金を追加してるから、毎回のオークションで操作する必要はないけどね。(訳註:上記のFRBの言い方はともかく、実態としては準備金の追加が先で、それが国債と交換されて準備金が排出されると、また準備金が追加される流れ。)
でもこれって、固定相場制でさえも「政府が先に支出してる」ってことには変わりないんだ。
金本位制のときでさえ、政府は金(ゴールド)を買って、いわゆる「金兌換証書」みたいなものを刷って、または中央銀行の口座の数字を増やす(クレジット)と、そこから税を払うためのドルが生まれるんだ。
これはすごくシンプルな話さ。
誰も「スタジアムはまずお客さんからチケットを集めてから、チケットを売る」なんて思わないでしょ?
スタジアムが先ずチケットをお客さんに売って、次にお客さんからチケットを集めてるってのは当たり前のことだ。
チケットはスタジアムが発行してるものだからね。
実はオバマ大統領だってかつてこう言ってたんだよ。「マネーは政府から出てくる」ってね。
でも、その時すごいブーイングがあって、「いやいや、ほんとの富は民間から生まれるんだ!」って言い直したんだよ。
でも、それって、"実体的な富"と"税金を払うためのドル"を混同してるんだよな。
オバマは結局、「本当の富は民間から生まれる。政府はそれを一部持っていくだけだ」って譲歩しちゃったけど、最初の発言のほうが正しかったんだよ。

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オバマのダメな発言その2「アメリカ中の家族が支出を抑え、困難な決断をしている。政府もそうしなければならない。」(2010年一般教書演説)(画像引用元

税金を払うためのドル――つまり納税義務を果たすための名目的な納税手段(タックス・クレジット)ってのは、民間からじゃなくて、政府から出てくる。
これがステファニー・ケルトンが言ってる「順序」の話なんだ。


潮目が変わったのは…

ウォーレン・モズラー:
ところがね、議会の連中、全員って言ってもいいけど、その順番を逆に考えてるんだよ。
「まず徴税してドルを入手しなきゃいけない」って思ってる。ドルは徴税によって得られるわけじゃないんだけどね。
そして「税金で足りないなら、借金しなきゃ」ってなる。
で、「その借金は中国からしてる」とか、「孫の世代にツケを残すことになる」とかね。
オバマ政権が最初の景気刺激策をやったときも、本当は2兆ドルが必要だと思ってたけど、「そんなに借金したらヤバい」ってビビって、1兆ドルだけに減らしちゃったんだ。
たしか当時国務長官だったヒラリー・クリントンもオバマと一緒に中国に飛んで、「お願いだから国債買ってください、アメリカの医療制度が潰れちゃうから」って言いに行ったんじゃなかったっけ(笑)

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米国債買っチャイナおばさんことヒラリー・クリントン(記事URL

ポール・ライアン(当時下院議長)なんかは、「アメリカがギリシャみたいになる」って言ってた。IMFにすがる羽目になるぞって。
クルーグマンか、それに近いニュー・ケインジアンの誰かだったと思うが、「これだけ借金すれば金利が上がるぞ!」って大統領に分厚いレポート出してたしね。
でもそれから8年後、新型コロナウイルスの流行で、政府は5兆ドルくらいの赤字を出した。
でも誰もギリシャの話なんてしなかった。
中国のことも気にしなかった。
金利も気にしてなかった。
みんなが心配したのは、「インフレになるかどうか」だけだった。
なぜそれが変わったのか?
何が8年で変わったのか?
それを象徴してるのが、ステファニー・ケルトンが上院予算委員会の要職に就任したことだと思う。

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潮目を変えたケルトンの「赤字の神話(The Deficit Myth)」(邦訳

ケルトンが発言し始めて、みんなが彼女の文章を読んで、考え出した。
すぐにじゃないけど、8年かけて、こうなった。
「政府の小切手は不渡りにはならない」ってみんな知るようになった。
詳細は理解できていなくても、金利はFRBが上げようと決めない限り上がらないってわかってきたし、「問題は、支出が多すぎてインフレを起こすかどうか」って議論に変わった。
つまり、MMTが論点を正しい場所に移したってことなんだ。
もう「国債は売れるのか?」とか「不渡りになるのか?」って話じゃなくて、「その支出が経済にどんな影響を与えるのか?」ってことを問うようになった。


政治家って本当にわかってないの?

アダム・バトラー:
でもさ、ウォーレン、なんで議員とか有名な主流派の経済学者たちは、さっき言ってた「政府支出は税金で制約されない」って話を受け入れるのに、そんなに苦労してると思う?
どうしてそれを理解するのがそんなに難しいのかな?

ウォーレン・モズラー:
うん、それはね、いい質問なんだよ。私も実は、その答えを君にも手伝ってほしいと思ってたくらいだよ。
私としては、MMTの話ってすごくシンプルだし、10歳の子どもにだって説明できると思ってる。
実際、私自身が上院選に出馬したとき、同じく出馬してたリチャード・ブルーメンタール上院議員と会って、3時間くらい話したんだ。ちなみにこの時私は1%しか得票できなくて選挙には負けたんだけどね(笑)

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2010年、割とガチで上院選に出ていたMMTおじさんの黒歴史(プレスリリース原文

ブルーメンタール議員はハーバードで経済を習ったって言ってたよ。60年代の話だけどね。
「うん、たしかにそう習ったけど、でも今はそこには踏み込めない」って言ってたんだよ。
その後、彼が議員に当選してから再度会ったときに、「議会の中でMMTわかってる人いる?」って聞いたら、
彼は「いないと思う。誰かいるなら教えてくれ、そしたら自分も話し始めるよ」ってさ。
要するに、彼自身も理解はしてた。でも、最初の一歩を踏み出したくなかったんだよね。
他の議員については、あんまり個人的な付き合いがないから語れることはないけど、たとえばヴァン・ホーレン上院議員(メリーランド州、民主党)とは友人と一緒に会ったことがあって、私の本もちゃんと読んでくれてた。
でもやっぱり、ホーレン議員にしても「誰か他の人が先に話してくれたら…」って感じだった。
もうその時点で、知的誠実さに欠けてると言えるかもしれないけど、同時に、これは政治的意思の問題でもあるんだよ。
「波風立てずに再選される」のがいちばん楽だし、選挙資金もそのほうが集めやすい。
だから結局、みんな「今まで通りのこと」を繰り返し言ってるんだと思う。
だからね、正直なとこ、私にもはっきりした答えは出せないんだ。


人は失業よりも〇〇を嫌う

アダム・バトラー:
こういう話を世の中に出すとき、つまり「政府支出ってのは、税金や借金に縛られてない」って言い出すと、人々の間で「希少性が崩れる」とか、「お金に対する自制がなくなる」って恐れられるのかな?

ウォーレン・モズラー:
うん、まさにその通り。間違いなくそうだね。
でも私はこう言いたい。
「君は"知識を得た有権者"ってやつを信用するか?」ってね。
そして、正直言って、多くの政治家たちは有権者を"信じてない"んだ。
「もし人々がこの事実を知ったら、もう何でも欲しがって大変なことになる」って思ってる。
でも、私の観察ではね、実際はまったく逆なんだ。
みんなね、3%のインフレに苦しむくらいなら、10%の失業のほうを選んじゃうんだよ。
むしろ人々は、政治家が心配しているのとは逆方向に振り切れてしまっているんだ。
それにね、一部の人たちは、高い失業率が続くことにある意味"安心"を感じてるようにすら見える。
失業率が5%、6%、7%とあればね、残りの93〜95%の人たちは、「配管工呼んだらすぐ来てくれる」「芝刈り頼んだら20ドルでやってくれる」とか、要は人を安く雇えて便利って話なんだよね(訳註:もちろんモズラーはそれがいいと言ってるわけじゃないよ!)。
「20ドルで芝刈りやってもらえたよ」「え、俺30ドルだったよ。誰に頼んだの?」――なんてね。
で、私が思うにね──自分の収入が安定してて、生活に困ってない人たちって結構多いわけよ。そういう人たちは、とにかくインフレを嫌がるんだ。
それに、困った人たちが自分のところにお金を求めてくる方がいいんだよ。そうなると、自分が"力のある立場"になったように感じられるからね。
つまり、失業率が5%ってことは、95%の人は職がある側にいるってことだろ?その勝ち側にいる人たちにとっては、インフレよりも、ちょっとした失業のほうがむしろ好都合に感じられたりするんだよ。
そういうのが、人間の性(さが)ってもんなんだろうな。
で、今のアメリカを見てごらんよ。
インフレ率が3%台だってのにバイデン政権がひっくり返っただろ?

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むしろよくぞ3%近くまで落ち着いたなって感じだが…(引用元

あれは一体どこから来た流れなんだい?
"政府がタダで何かを配るのは気に食わん"とか、"もっと政府支出するなんてごめんだ"とか、そういう話じゃないんだよ。
人々が嫌ったのは、インフレそのものだった。
経済は強かったし、失業率は史上最低水準だったのに、政権はひっくり返ってしまったんだ。
つまり、それだけ"インフレへの忌避感"が強いってことなんだよ。
だからこの事実は何かを物語ってると思うんだよ。
もちろん、いつもそうとは限らないかもしれない。
だけど──今この瞬間は、まさしくそういう空気があるってことさ。


「ハイパワード・マネー」も時代遅れの概念だよ

[00:18:36]

リチャード・レイターマン:
なるほど。
で、ここで確認したいんだけど、MMTがどうやって「政府支出の種類ごとの違い」を捉えてるのか、そこをちゃんと理解したいんだ。
というのも、ここ十数年でMMTが注目されるようになった背景には、2009年以降の量的緩和(QE)で"インフレが起きるんじゃないか"っていう懸念があったと思うんだ。(もし僕の理解が間違ってたら訂正してくれていいけど。)
そして確かミルトン・フリードマンが提唱した区別があるよね。
つまり、彼が区別したのは──

  • 一方では 「ハイパワード・マネー」、つまり"僕らの財布にあるマネー"とか、財政支出によって経済に直接流れ込んでくるマネー。

  • もう一方では、「フィナンシャル・マネー」、つまり量的緩和で銀行システムに注入されたお金。これは主に金融機関の健全性を守るために供給されたお金だ。

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「フリードマンは…中銀が紙幣を刷り、新たに創造した準備預金で国債を買う形でインフレを引き起こせると主張していた」(引用元

そこで聞きたいんだ。MMTでは、この二つをどう区別してるのか?
それから、インフレの原因としてより強いのは、財政支出のような"ハイパワード・マネー"の側なのか?
それとも、量的緩和みたいな金融政策オペレーションなのか?
MMT的には、どっちがインフレに効いてくると見てる?

ウォーレン・モズラー:
まず言っとくけど、「ハイパワード・マネー」ってのは、固定為替相場の時代の考え方の名残だよ。
当時は「ドル=金(ゴールド)と交換できる」って前提があって、それが"パワーのあるマネー"だった。で、銀行はそのマネーを必要としていた。
なぜって、預金者が現金を引き出すときは、金に交換できる兌換通貨で返さなきゃならなかったからね。
だから当時の金融システム全体は、金準備量に由来する"兌換可能通貨の供給量"に制約されてたってわけさ。


量的緩和って意味あんのかい?

ウォーレン・モズラー:
その文脈で考えると、量的緩和(QE)ってのは、政府が国債を買ってるだけの話だ。
で、その国債ってのは、実質的には"ドル建ての貯蓄"にすぎない。 機能的には、連邦準備銀行(FRB)が運営する"貯蓄口座"と同じもんなんだよ。
たとえば、バンク・オブ・アメリカとかJPモルガンが預金者に向かってこう言ったらどうなる?
「うちとしては、みんなに貯蓄口座(savings)よりも当座預金口座(checking)を使ってほしい。その代わりちょっとプレミアムつけますよ」ってね。
で、預金者が「じゃあいいよ」って言って、貯蓄を当座に切り替えたとする。
これを聞いて、「インフレになる!」って騒ぐ人がいると思う?
FRBだって、普通の銀行と同じで、ただ帳簿を管理してるだけなんだよ。
(1)政府が支出するときは、FRB(自分の銀行)に指示して、君の銀行口座の数字を増やす(クレジット)ってだけのこと。
JPモルガンのFRB内口座──つまり"準備金口座"をクレジットするわけ。
これって要は"当座預金口座"と同じもんだ。
そしてそこに数字を書き込めば、すでに通貨は生まれているわけ。
その資金は、他の誰かのFRB口座にしか動かせない。
(2)で、君が国債を買えば、そのドルは準備金口座から貯蓄口座(=別のFRB内の口座)に動くだけ。
(政府の支出が資産を増やすのと違って、)君の財産は何も増えてないし、経済全体も変わってない
銀行の帳簿のどこに記載されてるかが変わっただけ。ただの口座振替。

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もっちー本より(密林で買おう)

FRBがやってるのは、人々が資産を保有する判断基準を、ちょびっといじってるだけなんだ。
QEはあくまで、手元の資金(キャッシュ)をそのまま維持するか、満期の長い資産(デュレーション)に振り向けるかという判断に僅かに影響を与えるだけ。
で、それが一体、経済に何の影響を及ぼすって言うんだい?


日銀の職員は何て答えたのか

ウォーレン・モズラー:
たとえばね、私が25年くらい前にイングランド銀行のアンドリュー・クロケットって人と話したことがあるんだ。 そのとき、日本銀行の関係者とも一緒にいてね。 ちょうど(2001年に)日銀が量的緩和(QE)を発表した直後だったんだよ。
3人で和やかに話してて、私は日銀の人にこう聞いた。
「日銀が日本国債(JGB)を買い取って、その分を準備金口座の数字を増やす(クレジット)。それで何が起こると思ってるの?」ってね。
国債を減らした分の準備金を増やしたからって、信用のおける借り手が列をなして融資を受けにやってくるわけじゃない。
そもそも「貸し出しが預金を生む」のであって、「預金があるから貸せる」んじゃないのさ。だから、準備金を増やしても、貸し出しが増えるってわけじゃないんだよ。そんなことで何か効果があると思ってるのは、お門違いもいいとこさ。
クロケットも、それを聞いてすぐにうなずいたよ。 日銀の担当者に「で、どう思う?」って顔してた(笑)
そしたら日銀の人は、「それがわれわれの政策です。あとは様子を見るしかないです」って答えたんだ
そのあと30年にわたって日銀はあらゆる日本国債を買いまくって、日本の政府債務全体の満期(デュレーション)をゼロに近づけたけど、何も変わらなかったじゃないか?そうだろ?
「何も起きない」ってことを証明するのは私の責任じゃない。
「何かが起きる」って主張する人が、その理由を説明すべきなんだ。

画像
日経新聞;日銀量的緩和、金融危機対応で「効果」 デフレ止められず(記事

リチャード・レイターマン:
それでも、ある意味では影響はあったんじゃない?
日本の国債市場って、しばらく事実上なくなったようなもんだったでしょ。
何日間も取引がまったくないこともあったし。

ウォーレン・モズラー:
うん、でもさ、それが何だっていうの?
「取引したいのにできなかった」って話じゃないでしょ?
誰も取引したくなかっただけじゃん。
夜になったら市場が眠るのと同じさ。
「存在してない」ように見えるけど、それは寝てるだけ。
眠ってるのを起こせば取引はされるとも。


"人類の労力の壮大な無駄遣い"

[00:24:07]

リチャード・レイターマン:
じゃあ、ちゃんと機能する国債市場って、その国の経済の機能にとって重要な要素だと思う?

ウォーレン・モズラー:
うーん、まあ、「経済が機能してる(functioning economy)」っていうのをどう定義するかによるよね。
でも、私だったらそんな風には定義しないよ。
昔は国債なんてなかったときもあったけど、誰も困らなかったからね。
当時は「Tel 7 days」って7日物の短期貸出レートなんかをベンチマークに使ってたし。
結局それって、ただの"参照点"にすぎないんだよ。
政府債市場なんて、別に経済を動かすために必要なもんじゃない。

日本を見れば分かるけど、日本国債の取引がなかろうと、マクロ経済には何の影響もなかったじゃん?誰も取引してないならそもそも誰が気にするっていうんだ?

リチャード・レイターマン:
じゃあ、もしFRBが市場に出回ってる国債のほとんどを買っちゃって、
今の国債市場が機能しなくなったらどう思う?
流動性がなくなって、それがアメリカの経済とか金融市場に悪影響を与えるってことはないの?

ウォーレン・モズラー:
私はそうは思わないよ。むしろ、もう一歩進んだ考えがあるんだ。
たとえばさ、財務省が全部3カ月物の短期国債だけ発行するようにしたらどうだい?
そしたら長期債はゼロだ。…で?誰が困るんだい?
わざわざ国債を発行して、それをFRBが買い戻すなんて、ムダな手間じゃないか。
間に挟むステップをすっ飛ばせばいい。なんでそんなこと、わざわざやってるんだ?
これじゃ"人類の労力の壮大な無駄遣い(waste of human endeavor)"ってやつだよ。間に証券ブローカーを1人、2人挟んでさ。

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この無駄なステップこそ「穴掘って埋める」ってやつでは?(画像:生成AI)

結局、バーナンキが言ってることって…

ウォーレン・モズラー:
昔ベン・バーナンキと会ったことがあってさ。
彼がFRBの副議長を5年務めてから議長になるまでの、ちょうど合間の時期だった。たしかその時は、大統領経済諮問委員会(CEA)のトップをやってたと思う。
私含めてたった4人だけの会合だったんだけど、MMTの話をするつもりはなかったよ。だってまた呼んでほしかったからね(笑)
でね、彼が「非伝統的金融政策」の話をしてたから、質問したんだ。
バーナンキは当時、ヴィンセント・ラインハート(グリーンスパン時代の金融政策責任者。訳註:バーナンキ時代にはFRBの金融政策局長)と一緒に論文を書いていた。ちなみにラインハートは私がスピーチを書くのを手伝ってくれたこともある。実際FRBでオペレーションをやってる連中に話してみると、私が言ってることを正確に理解できるんだよ。彼らの使ってる言語で喋ってるんだから議論の余地もないんだ。
ともかく、バーナンキにこう聞いてみた。
「君は非伝統的な金融政策について論文を書いてるみたいだけど、財務省が国債を発行して、それをFRBが買うっていうなら、最初から財務省が国債を発行しないのと同じじゃないか?民間からすれば実質同じだろう?だったら最初から連携して国債を出さないようにすればいいじゃないか?」って。
そしたらバーナンキはこう返してきた。
いや、それは違う。FRBが国債を買えば、準備金(リザーブ)をシステムに追加することになる。それには影響があるんだ」ってね。
まあ何ともナンセンスな答えだったんだが、要はバーナンキは準備金会計(リザーブアカウンティング)の仕組みをちゃんと理解してなかったんだよ。
もちろん彼は賢い人だったよ。
プリンストンの教授で、専門は「金本位制から大恐慌までの経済史」を研究してる。
その範囲のことは完璧に分かってる人だった。
でもね、バーナンキの考え方って、ぜーんぶ金本位制時代のエコー(名残り)なんだ。

画像
ゴールドスタンダード丸出しだな?

金本位制だったら、「FRBが国債を買う=金との兌換性のある通貨が増える」って話にはなる。
でも、変動相場制ではそういうの、まったく関係ない。
準備金を保有する主体には、選択肢が2つしかない。

  1. 何もしない(そのまま準備金として持っとく)

  2. 国債を買って別の口座(貯蓄口座)に移す

金本位制だったら、もう1つの選択肢があった。
「金(ゴールド)を持ち出す」ことができたんだ。
でも今はそれができないから、通貨制度そのものがまったく違う構造になってる。
つまりさ、テレビでチャンネルが違うようなもんだよ。
昔の制度と今の制度では、全然違う番組を流してる。
見た目は似てても、中身も登場人物も全然別物なんだ。


量的緩和って意味あんのかい?Take2!

アダム・バトラー:
じゃあ、その準備金の会計処理(リザーブアカウンティング)について、もうちょっと詳しく聞きたいんだけど…
たとえばQE(量的緩和)って、FRBが「証券口座(国債)」と「当座預金口座(準備金)」の間でマネーを動かしてるってことだよね?

ウォーレン・モズラー:
うん。ただね、FRBは直接取引してるわけじゃないんだよ。
プライマリーディーラー(JPモルガンやゴールドマン・サックスなど、FRBに登録された金融機関)を通してやってる。
(訳註:日本でいう国債市場特別参加者制度のこと。例えば野村證券、大和証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などの証券会社が登録されていて、日銀とのオペに参加できる。リストは財務省ページで見れる。)
たとえば、ある銀行が証券を売って、それをFRBが買う。
それがシティバンクだろうが、バンカメ(バンク・オブ・アメリカ)だろうが、経済にとってはどうでもいい話だよね。
私がJ.P.モルガンだとして、自分の持ってる国債をFRBに売ったとしよう。
そうしたら、FRBが私の準備金口座のドルを増やして、証券口座(国債)のドルを減らす。
100億ドル分(国債)減らして(デビット)、100億ドル分(準備金)増やす(クレジット)。それだけなんだ。

アダム・バトラー:
じゃあ、バーゼルII(参照)とかの銀行の自己資本規制の下で、証券口座に10億ドルあるのと、準備金口座に10億ドルあるのとで、銀行にとって何か違いはあるの?

ウォーレン・モズラー:
あるといえばあるかな。
たとえばそれが3ヶ月物の短期証券だったら、国債も準備金もリスク・ウェイトはゼロだから違いはないけど、それが長期債になると話はちょっと変わる。
銀行ってのは、(米国では)CAMELS規制ってのに従ってるんだよ。
これは次の評定項目の頭文字を取ったものだ。

  • C=Capital Adequacy(自己資本)

  • A=Asset Quality(資産内容)

  • M=Management(経営)

  • E=Earnings(収益性)

  • L=Liquidity(流動性)

  • S=Sensitivity(感応度)

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CAMELSはアメリカの銀行の健全性を評価するためのフレームワーク(かわいい)

最後の項目は、銀行は金利変動に過敏になってはいけないってことなんだ。
金利が上がっても下がっても、銀行の資本が大きく変動しないように求められてる。
もし変動するようなら、調整が必要なんだよ。
だから、長期国債を持ってる銀行が、短期の証券に切り替えたりすると、その「デュレーション(満期構成)」が変わるでしょ?
そうするとリスクバランスが崩れる可能性がある。
そうなったら、それに応じて調整が必要ってわけ。
でも、それ以外では、国債も準備金もリスク・ウェイトはゼロだし、銀行の全体資産は変わらないから、レバレッジ比率への影響も限定的だよ。
つまり、違いがあるとすれば利率への感応性、デュレーションの違いくらいってことだね。
個人にとっては、ほとんど何の違いもないよ。


(パート2/3に続く…)

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麻生太郎

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